論文「『吾妻鏡』空白の三年間」公開

立命館文学』677号が公開されました。美川圭先生の御退職記念論集です。
私は「『吾妻鏡』空白の三年間」を寄稿しております。

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/rb/677/677PDF/saeki.pdf

先日「鎌倉殿サミット2022」で開陳しました、「『吾妻鏡』空白の3年間は一幡誕生記事の隠蔽のため」説を展開しております。
もともと別のテーマで準備していたのですが、どうもしっくりこなかったところに、「鎌倉殿サミット」のお話をいただいて、事前質問の中に「『吾妻鏡』空白の3年間をどのように考えますか?」というのがあったんです。で、その瞬間、なぜか「それは一幡誕生記事の隠蔽のためだ!」と思いまして。それが神の啓示だったのか、それとも悪魔の囁きだったのかは、ぜひご一読の上でご評価ください。よろしくお願いします。
とはいえ、当然ながら、ひらめきを論証するとなると大変でした。「若狭局(一幡の生母)の処遇を、大宮殿(藤原頼嗣の生母)と比較して考察する」という、アクロバティックなことをやっております。さらに、「源頼家の参内は童殿上」「後鳥羽天皇は建久六年に内裏殿上定を開催し親裁」などの論点が。最後の論点のおかげで、美川先生の最重要な御業績の一つも引用できたのが、私としては嬉しかったです。

全体の構成は以下の通りですが、すごいラインナップで、私も今から拝読するのが本当に楽しみです。これも美川先生のご人徳の現れです。心から、これまで賜りました御鞭撻に御礼を申し上げますとともに、今後の御健勝を御祈念申し上げます。

www.ritsumei.ac.jp

日本書紀厩戸皇子像の再検討 本郷 真紹
大宮右大臣家による陸奥国進出の過程 滑川 敦子
『除秘鈔』にみる後三条天皇と除目小考― 天皇自撰次第書と「天皇作法」 ― 佐古 愛己
11・12世紀における所帯職譲の広がりと王権・院政 井上 幸治
鎌倉幕府と寿永二年十月宣旨について― 常陸吉田神社文書の再検討 ― 岩田 慎平
吾妻鏡』空白の三年間 佐伯 智広
源実朝の仏教信仰 山本 みなみ
天皇上皇同所同宿の歴史的展開と忌避― 順徳・後鳥羽頻回長期接触の背景 ― 谷 昇
後鳥羽院平安京周縁地域― 院政の展開と水無瀬殿 ― 長村 祥知
鎌倉時代西園寺家の経済基盤と家人 山岡 瞳
朝廷の異国降伏祈禱と地方寺院 池松 直樹
吉田定房奏状」再考 坂口 太郎
赤松円心建武政権離反 花田 卓司
室町幕府奉行人丹後松田氏の研究― 南北朝期を中心に ― 田中 誠
祇園社による広峯社支配と広峯氏 吉永 隆記
〈史料紹介〉応仁二年最勝光院方引付にみる畿内での替銭取引 伊藤 啓介
中世の「ふるまい」の意味について― 『山科家礼記』・『言国卿記』を中心に ― 酒匂 由紀子
「朝鮮三奉行」の渡海をめぐって 谷 徹也
「御救米」給付と社会――安政地震コレラ流行 東島 誠
左川ちか翻訳考:1930年代における詩人の翻訳と創作のあいだ― 伊藤整、H・クロスビー、J・ジョイス、V・ウルフ、H・リード、ミナ・ロイを中心に