アイスショー「BEYOND」

※最近は告知ばかりしていましたが、本来、このブログはこうしたレビューがメインなのです。
浅田真央さんが企画したアイスショー「BEYOND」を見てきました。

beyond-maotour.jp


実に素晴らしかったです。今までにないアイスショーでした。
アイスショーというのは、基本的には出演者が個別に演技していくものが中心なのですが、今回のショーは、まるで一つの舞台作品のように、一つ一つの演技が連続していきます(暗転はしますけど)。休憩なしで約2時間ぶっ通しなので、なんだか一本の映画を見たような気分です。全体を通してのストーリーがあるわけではなく、セリフやナレーションも一切ないので、前衛映画っぽいですが。
で、アイスショーというのは、氷上で演じるという制約上、基本的に舞台セットというものがないのですが、今回は、ショートサイドの大スクリーンが、背景としてとても効果的に使われていました。映像のCGも非常に良くできていて、とてもゴージャスな雰囲気のショーに演出されていました。
そして何より、スケーターのみなさんの演技が素晴らしかったです。座長である浅田さんの演技は、本当に本当に素晴らしかった。演じているというよりも、演じているものが本人のキャラクターそのものとしてそこにあると感じられました。
フィギュアスケートというのは、特に女子の場合、競技者としてのピークは10代後半までに訪れますが、多くの場合、表現者としてのピークと時期的に一致するわけではありません。今まさに、浅田さんは表現者としての円熟期を迎えているのではないかと思いました。
というか、実は競技としてのフィギュアスケートという枠は、浅田さんには小さ過ぎて窮屈だったのかなと、今回のショーを見て感じました。興行としてこれだけのアイスショーを成立させるのは、とても大変だったのではないかと思うのです。背景映像も素晴らしかったですし、スケーターがアップで映し出される天井の吊りモニターも迫力がありましたが、すごく費用も掛かっているでしょう。そのために、各種宣伝はもちろんのこと、たくさんのスポンサーを集めて、興行にこぎつけるという、単なるスケーターの枠を超えた、プロデューサー・プロモーター的な役割までこなされたはずで、それだけに、そうやって積み重ねられたものが素晴らしいショーとして結実したのを見ると、本当にすごいの一言です。開演前に流れたスポンサー企業の宣伝映像までが、浅田さん出演で非常に作りこまれていて、とても行き届いていました。
もちろん、ほかの出演者のみなさんも素晴らしかったです。アイスショーの群舞って、ふつうはどうしてもとってつけた感が出てしまうんですけど、今回は昨年9月から全国ツアーで回っているだけに、さすがの完成度でした。
個人的には、現役時代から応援していた今井遥さんの演技が、やっぱり素敵でした。動きのしなやかさとスピード感あふれるスケーティングの迫力が光っていました。競技ではそのスピード感が不安定さにもつながっていたと思うのですが、今回伸び伸びと演技をされているのを見て、しみじみ良かったと思いました。やっぱり、アマチュアでの成績がすべてではないという方が、スケーターもファンも幸せなんじゃないですかね。
その点では、今回は浅田さんのパートナーという立ち位置の柴田嶺さんも同様です。シングル時代は繊細さが持ち味だった彼が、ペアに転向して、それがこうしてアイスショーで花開くんですから、ほんと人生って何が何につながるかなんてわからないですよね。継続は力なりというのは、一つの不変の真理なのでしょう。
そして田村岳斗さん。最初から最後まで滑りまくっていて、もう大ベテランなのに過重労働じゃないかと思うんですが(笑)、変わらず雰囲気も演技もイケててカッコよかったです。
全国ツアーはまだまだ続いております。おススメです!