東京バレエ団〈モーリス・ベジャール追悼特別公演 I 〉。


ギリシャの踊り」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:ミキス・テオドラキス
I. イントロダクション
II. パ・ド・ドゥ(二人の若者):長瀬直義 - 横内国弘
III. 娘たちの踊り
IV. 若者の踊り
V. パ・ド・ドゥ:小出領子 - 松下裕次
VI. ハサピコ:上野水香 - 高岸直樹
VII. テーマとヴァリエーション
    ソロ:後藤晴雄
    パ・ド・セット:佐伯知香
            高村順子
            西村真由美
            乾友子
            田中結子
            森志織
            吉川留衣
VIII. フィナーレ 全員
東京バレエ団初演:2003年01月16日 東京文化会館

火の鳥
火の鳥木村和夫
フェニックス:高岸直樹
パルチザン:小出領子、高村順子、西村真由美
      高橋竜太、平野玲、松下裕次、井上良太、宮本祐宜
東京バレエ団初演:1989年07月21日 東京文化会館

春の祭典
振付:モーリス・ベジャール
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
生贄:中島周
2人のリーダー:平野玲 - 横内国弘
2人の若い男:氷室友 - 小笠原亮
生贄:吉岡美佳
4人の若い娘:小出領子、高村順子、西村真由美、佐伯知香
東京バレエ団初演:1993年04月09日 東京文化会館


というわけで、東京行きの主目的、東京バレエ団モーリス・ベジャール追悼特別公演 I 〉の感想を。
今回の演目は、「ギリシャの踊り」、「火の鳥」、「春の祭典」の3つ。
火の鳥」は今回が初見。
上演記録を見ると、国内では2003年の<奇跡の響演>以来の上演なので、ある意味当然かも。
(海外公演だとしょっちゅうやってんですけどね。)
ギリシャの踊り」と「春の祭典」はけっこう良く見ている部類で、記憶と記録をたどってみると、
ギリシャの踊り」は06年4月の<ベジャール・プロ>、05年12月のギエム『最後のボレロ』、
05年2月の<ベジャール・ガラ>で計3回、
春の祭典」は05年11・12月のギエム『最後のボレロ』、97年?月のギエム『ボレロ』で計3回。
そうか、「春の祭典」はひたすら「ボレロ」とセットで見てたんだな(笑)。


個人的に、今回もっとも楽しめたのは「ギリシャの踊り」でした。
見るのも4回目で、だいぶいろいろ見えてきたから、というのもあるんでしょうけど。
なんていうか、「とっても地中海」な作品。
青い空、青い海、輝く太陽、飛ぶ飛ぶカモメ…という感じ。
音楽がまたいいんですよねー。民族楽器ブズーキを使った、とっても印象的なメロディ。
(非常に感染力が強い音楽で、今でも頭の中でぐーるぐる。)
そして衣装。男性は白い長ズボンのみ、女性は黒or白レオタード&白タイツと、いたってシンプル。
それがかえって、ダンサーの姿をすごく美しく見せます。
裸像というのは、ルネサンスで復活したように、古代そしてギリシャの一つの象徴じゃないかと思うんですが、
それに通じる美しさではなかろうかと。
今回この演目で初めて高岸さんがキャストに入っているのを見たのですが、
むっちりした高岸さんの筋肉にうっとり(笑)。
なんというか、塩野七生さんが言うところの、「地中海的官能」にあふれた作品です。

で、ベジャールの見せ方の、うまいことといったらまた。
見てて「ここでこう来てほしい!」っていう期待が、全て満たされる、と言えばいいのかな。
振り付けもフォーメーションも、キメてほしいところを全てキメてくれる。
それとか、例えばオープニングで、波の音をBGMに、海の青い空を背景に、
ダンサー達が腕と片足を上げた状態で静止しているんですが、
その状態で背景に黒い幕が上からサーっと降りていって、黒味に切り替わったところで踊りが始まります。
やってることはただ黒い幕を降ろしただけなんですけど、
動かないダンサー達との対比もあいまって、その視覚的なインパクトがすごい。

というわけで、いろいろと非常に楽しかったです。
後藤さんも良かったけど、翌日の中島さんでも見てみたかったなー。


火の鳥」は…うーん、振り付けも、パルチザンという設定も、
それなりに面白かったけど、どうも自分の中ではあまりピンと来ず。
何度か見る機会があれば、感想もまた変わるかもしれませんけど。
パフォーマンスそのものは、木村さん&高岸さんを堪能できて非常に満足でした。


春の祭典」は、なんというか、革新性がいつまでたっても古びない作品だなー、と。
タイツのみの衣装も、何もない平場の舞台も、生々しく描かれる人間性も、
全てが今ではある種「当然のもの」として、一つの古典となりつつありますが、
そんなことと関わりなく、今もなおセンセーショナルで、刺激的な作品です。
これはやっぱり、ストラヴィンスキーの音楽によるところも大きいのかなあと思います。
技法はクラシック音楽で、使ってる旋律はむしろ土俗的と言っていいほどで、
そのくせ実に革新的で、他の音楽にはないインパクトが備わっている。
現代バレエでは、もちろん現代音楽もクラシック音楽も使われるわけですが、
ストラヴィンスキーの音楽との取り合わせが、「古くて新しい」魅力の源泉なのではないでしょうか。
とはいえ、今だからこそそう思えますけど、
1959年の初演の衝撃は、さぞかしすごかったんでしょうねー。
中島さんの生贄も、存分に堪能できてよかったです(笑)。


おまけ。
自分の席は、関係者席から通路を挟んで斜めうしろといったところだったんですが、
2列・2席離れたところにいたのが首藤康之さんだとカーテンコールで気が付きました。
うーむ、もっと早くに気付いておけば(って、別にそれで何がどうなるわけでもないけど)。


ちなみにこのシリーズ、Ⅱが6月のBBL来日公演、Ⅲが東バの『くるみ割り人形』、
Ⅳが東バの『カブキ』と続きます。
BBLは大阪公演×2と、千秋楽の松江公演遠征がすでに確定(笑)。
『カブキ』は絶対観に行くと思うんですが、『くるみ割り人形』は、さてどうでしょう。
まだ見たことないし、見てみようかとは思うけど、きっとその頃は忙しいし…ふむう。