「何か」になりたい人のために。

ある程度コアなF1ファンの方なら、
「けんさわ」さんこと、カメラマンの澤田賢志さんのことはご存知でしょう。
『F1速報』誌上で、「けんさわのサーキット便り」(通称「サ便」)という連載をされていた方です。
そもそもカメラマンが誌上で連載を持つというのが相当珍しいと思うのですが、
このコーナーがほんと読みごたえがありまして。
以前このブログでも紹介しましたが、ミシュランユーザーが本戦を全車ボイコットした05アメリカGPで
各チーム首脳陣の鳩首会議の様子を写真付きで紹介する、とか、
あと有名なところでは、リタイヤしたハッキネンのマシンのコックピット内の写真をスクープして、
世界中のF1関係者をあっと言わせたりとか、もうとにかくカメラマンの枠を超えたすさまじい取材能力と
とてつもなく熱いF1への情熱を持ち合わせたお方です。
個人的に、川井ちゃんと並んで日本の誇るF1オタクの2大至宝だと思っていたのですが(笑)、
07年から海外取材を引退されてしまって、非常に残念に思っておりました。

で、そのけんさわさんが、最近F1速報のHPで「なまらF1記」という連載をされています。
これがまた実に面白い連載で、カメラマン志望に限らず、
特に世間的なレールを外れた「何か」になりたい人は、ぜひ一度読んでみる価値がある文章だと思います。
内容は、日本におけるF1メディアの黎明期に、まったくの素人があれよあれよと
F1の専属カメラマンになってしまうという体験記です。
なんていうか、もうとにかく自分のやりたいと思うことに突き進む、その推進力が素晴らしい。

確か田中芳樹が、「小説家になりたいんですが、どうしたらいいんですか?」というファンからの質問に、
「小説家になる方法なんてなくて、勝手になってしまうのだ」みたいなことを書いていましたが、
(確か村上春樹の小説家になるきっかけの話も、似たような内容だったような)
それに通じるものがあるんだと思いますね。

もちろん、才能、綿密な計画、必要な訓練、継続的な努力…といった要素だって重要です。
ですが、結局のところもっとも必要なのは、「最初の一歩」を踏み出す勇気、
走り出したら止まらない情熱なんじゃないか、と思わされます。
踏み出した結果がつねにハッピーエンドで終わるわけではないのも、当然なんですが。