シルヴィ・ギエム「最後のボレロ」

というわけで、まずは「最後のボレロ」の感想を。
私が見てきたのは20日のBプロでした。
今回はるばる東京まで見に行ったのには理由がありまして…。
8年前、初めて見たバレエの公演が、ギエムの「ボレロ」だったんですよね。
今思えば贅沢極まりない話でしたが、当時はその値打ちもわからず。
そしてその当時は、8年後にこんなにバレエ好きの自分がいるとは思いもしていませんでしたが。
そんなわけで、もちろん大阪公演は2日ともチケットを取っているのですが、
友人がチケットを取ってくれたので(感謝感激!)、東京でも見ようと。

で、以下個人的感想(あくまで個人的感想ですので、要注意)です。
○テーマとヴァリエーション(振付:G・バランシン/音楽:P・チャイコフスキー
ソロ…高岸直樹・上野水香 群舞…東バのみなさん(名前省略)
なかなか面白い作品でした。
特にストーリーはないんですけど、バレエの基本的な(低く見てるわけじゃなくて、ある意味根源的な)
動作とか振付をオンパレードにした感じでした。
それだけに、ソロはプラスアルファとしての存在感がないと面白くないし、
群舞はピシッとそろってないと見所がない。
というわけだったのですが…えーっと、高岸さんはさすがでした~、素敵。
この人は華麗さとはまた違ったの存在感があって大好きです。
この演目では、丹念さというか丁寧さというか、
しっかりした感じが持ち味として感じられてとても良かったです。
他のみなさまは、もうちょっと決めるところは決まるように頑張って下さい、という感じでした。

○PUSH(振付:R・マリファント/音楽:A・カウトン/照明デザイン:M・ハルス)
シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル
神の雫』風に言えば、「偉大なダンサーと気鋭のコリオグラファーの幸福なマリアージュ」でしょうか(笑)。
ギエムが見込んで実現したコラボレーションだったそうですが、
ギエムの滑らかで曲線的な動きと、円運動を基調にした振付とのマッチングが絶品でした。
最初はムッルがリフトした状態からの動作が何度か繰り返されるんですが、
やがて男女の振付が入れ替わったり、二人で同じ動作をする振り付けが入ってきます。
そうすると、ますますギエムの動きの滑らかさが際立って見えるんですよね。
それをさらに活かしてるのが照明で、暗い背景の中で踊り手にスポットが当ると、
残像効果で手とかの動きの軌跡がものすごく印象的に目に焼きつきます。
これはほんと良かったです。堪能しました。

○『春の祭典』(振付:M・ベジャール/音楽:I・ストラヴィンスキー
生贄:中島周
二人のリーダー:後藤晴雄・木村和夫
二人の若い男:古川和則・氷室友
生贄:吉岡美佳
四人の若い娘:高村順子・門西雅実・小出領子・長谷川智佳子
これが実はとっても楽しみにしていた演目でした。
というのは、その一週間前にニジンスキー初演版を見たところだったので、比較しながら楽しめる、
ということと、8年前の「ボレロ」の前プロにもこれが入っていたので、その意味でも。
で、感想としては、やっぱり設定の抽象度が上ってる、特に衣装が白のコスチュームだけになっていて、
身体性をより強調するものになっている分だけ、野生的な荒々しさとかが強調されてる気がします。
それとか、古代性とか、呪術性とか、そういったものですよね。
これで見ると、ダンサーの体ってほんときれいだなあって思います。筋肉の付き方が。
首-肩-胸筋のラインとか(いわゆる「逆三角形」ですけど、
個人的にはブリリアントカットのダイヤモンドみたいだなあと思ってます)。
あと、最初に男性たちは膝を付いた状態で上体を前に床に着くまで倒してるんですが、
(上手く説明できないなあ…正座した上体で足を開いて、手を伸ばして体を前に倒した感じ
 形容すると「蛙が前にへしゃげたような」になるのかな??代案求む。)
そのときに見える、腰の辺りの背骨の周りについてる背筋の盛り上がり方がものすごいです。
筋肉マニアとしてはとてもたまらない(笑)。
生贄のお二人も素晴らしい出来でした。
個人的に吉岡ファンは大ファンですぅ~~。出てきただけで「やったあ!」という気分。

○『ボレロ』(振付:M・ベジャール/音楽:M・ラヴェル
なんかね、終わった瞬間涙が出そうになりましたよ、ほんと。
人間て、こうも機能的になれるもんなんですかね。
無駄な動作とか、一切の夾雑物が取っ払われたボレロでした。
ひとつの方向性を追求していって、行き着いた到達点なのかなあ、という気がしました。
機能美の極地。
人によって好みは分かれるところかもしれませんが、僕は大好きです。