劇団四季『オペラ座の怪人』。

劇団四季オペラ座の怪人』@大阪四季劇場 2007年9月8日

オペラ座の怪人:村俊英
クリスティーヌ・ダーエ:佐渡寧子
ラウル・シャニー子爵:北澤裕輔
カルロッタ・ジュディチェルリ:種子島美樹
メグ・ジリー:小川美緒
マダム・ジリー:戸田愛子
ムッシュー・アンドレ:寺田真実
ムッシュー・フィルマン:青木朗
ウバルド・ピアンジ:半場俊一郎
ジョセフ・ブケー:岡智

生の舞台で見るのは2回目。
前回見たのはもう5年前ですか。
京都劇場こけら落とし公演でやった時ですね。
その時にはまって以来、今に至る。

何が好きなのか、あれこれ考えてたんですけど、
とりあえず、この作品をラブストーリーとして見てるのは確かです。
でも、煽り文句のように怪人の愛を「美しい」物として見ている訳ではないような…。

どちらかというと、三者三様の愚かしさに目が行ってるんですかねー。
怪人の嫉妬、独占欲。
クリスティーヌの優柔さ。
ラウルの思い上がり。
最後はアンハッピーなエンディングとまでは言いませんが、
(きっとクリスティーヌとラウルは幸せに暮らすだろうし、
 怪人は愛された記憶を胸に、コンプレックスから解き放たれて生きるでしょう)
でも多分、それぞれに何がしかの苦さを背負って生きてくんだろうな、って。

で、それぞれのダメさ全開の場面(嫉妬に燃える怪人の"All I Ask of You"とか)を見ながら、
「ああ、でもそういうことってあるよね…」と思うわけです。
「わかっててもやめられない」ことだってあるし、
相手のことを思いやっているつもりで、自分のエゴを押し付けてしまっていることだってある。
で、そういういろんな苦さを、外側から見てかみ締めてみるわけです。
…こう書くと結構マゾヒスティックな鑑賞法だなあ(苦笑)。

すっきり気持ちよくハッピーエンドで終わるラブストーリーが嫌いなわけじゃないし、
健よかで強い主人公に共感できないわけじゃないんですけど、
どっちかというと、どこか不完全で弱さを抱えた登場人物が、
それでもどこかで自分と折り合いを付けながらやっていくような、
そういうストーリーの方が、ぐっと来ることが多いみたいです。

とはいえ、ストーリーとしてはかなりうっとおしい筋ではあるので、
「好きじゃない」という人がいるのは、それはそれでよくわかるんですけどね。


あとはもう単純に、メロディーとかストーリー展開とか演出とかがとにかく良くできてることでしょう。
正直、最初にはまった一番の理由はこれだと思いますし、
今でもこの点に関してはもう盲愛的なほどに好きです。

 第一幕オープニング&ラストのシャンデリア(666は悪魔の数字~♪)
 いきなり劇中劇『ハンニバル』からはじまる本編
 地底湖を進むボートとThe Phantom of the Operaの重唱
 第2幕オープニングの仮面舞踏会
 二人のThe Point of No Return、三人の三重唱
 クリスティーヌのキス
 マントの下に残されたマスク

…すごいとしか言いようがないです、はい。

今回のキャストの感想としては、
怪人がかなり個性的なバリトンでびっくりしたのと、
(四季版のCDで聴いててテナーのイメージが出来上がってた。
 映画版もバリトンなんで、そこまでびっくりすることじゃないはずなんですけど)
ラウルがめちゃくちゃ上手くて、
そうするとバランス的に『怪人逆ギレ暴走モード』の印象が強くなるんだなー、と(笑)。

あと、やっぱり劇団四季の発音法って独特なんですね。
母音過多な日本語で上演する以上いたし方のないことなのかもしれませんが、
ぶつぶつ切らずにもっとレガートで歌ってくれる方が好みだなあと思いました。
やっぱ一度はブロードウェイ版が見てみたいです。