F1は破綻するのか?

ホンダ:来年の「鈴鹿」は予定通り開催 F1撤退リリース全文
 ホンダは5日、世界最高峰の自動車レース「F1」からの撤退を正式に発表した。同日公表された福井威夫社長のコメント全文は以下の通り。

 F1レース活動について
 私どもHondaは、このたび、2008年をもってF1レース活動から撤退することを決定いたしました。
 サブプライム問題に端を発した金融危機と、それらに伴う信用危機、各国に広がった実体経済の急速な後退により、Hondaを取り巻くビジネス環境は急速に悪化してきています。当面の世界経済は不透明さを増すばかりであり、回復にはしばらく時間がかかることが予想されます。
 Hondaはこの急激かつ大幅な市場環境の悪化に対し、迅速かつフレキシブルに対応をしてきましたが、将来への投資も含め、さらに経営資源の効率的な再配分が必要との認識から、F1活動からの撤退を決定いたしました。今後のHonda Racing F1 Team、英国でエンジンの供給を行ってきたHonda Racing Development Ltd.については、チーム売却の可能性も含め従業員と協議にはいります。
 Hondaは第3期のF1活動として、2000年よりB・A・Rとの共同開発という新しい形での参戦をいたしました。その後のF1を取り巻く環境変化により2006年よりHondaが100%出資するチームとしての運営に移行しました。最高峰のレースへの挑戦は、思いのほか厳しい道のりでしたが、多くの応援を頂き、2006年に貴重な1勝をあげることができました。頂いたご声援に十分お応えすることなく撤退の決定をすることは大変困難をともなう決断でした。
 今後は、この激動の時代を生き抜き、レースで培われたチァレンジング・スピリットをもって、 様々な新たな課題に引き続き挑戦し続けてまいります。
 これまで、ご声援をくださった多くのファンの皆様、そして活動を支えてくださったF1界の皆様に対し、心よりお礼申し上げます。
 尚、来年、鈴鹿サーキットでは予定どおりF1日本グランプリを開催いたします。来シーズンに向けての改修工事も順調に進んでおります。
 ありがとうございました。

 本田技研工業株式会社 代表取締役社長 福井 威夫
というわけで、昨日から情報として流れていたホンダのF1撤退のニュースですが、
今日ついに正式の発表が行われました。
正直なところ、昨シーズンの成績があそこまで壊滅的でなければ、
ここまで唐突な決定にはならなかったような気がしますが。
(予算規模が全く違うとはいえ、2輪のMotoGPなんかの参戦は継続しますし)

とはいえ、「自動車メーカーは負けが込んだら撤退することになるんじゃないか」というのは、
すでに90年代末に急激に自動車メーカーの参戦比率が高まった時から言われていたことです。
すでにフォード(ジャガーブランドで参戦)が撤退しており、
これでメーカーで参戦しているのは、フェラーリ、ベンツ、BMWトヨタルノーの5社。
プライベーターが、レッドブル×2、ウィリアムズ、フォース・インディアの4チーム。
もしこのままホンダの売却先が決まらなければ、来季は9チーム18台でのレースになります。

思えば、90年代前半にもバブル崩壊にともなって日本企業がF1から次々撤退したわけで、
日本企業のF1参戦は常にバブルとともにあったのかもしれません(苦笑)。
とはいえ、あの当時と現在とで全く違うのは、チーム運営にかかる費用が一桁以上上昇しているのと、
メーカーの比率が高まっているために、1社が抜けることの影響が大きくなっていることでしょう。
現在の自動車市場の動向を見れば、この動きが他社に波及する可能性も十分ありえるわけで、
しかもプライベーターの参入は資金的に厳しいとなれば、
来季以降のF1の運営は、かなり厳しいものになるのは必至。
ここ数年、参戦費用高騰を防ぐための方策はいろいろ模索されていますが、うまく行っていないのが現状です。

問題はチームの撤退だけでなくて、最近多くでてきているのがレース主催者の撤退問題。
何度やっても定着しないアメリカGPの撤退はさておいて、
(つくづくアメリカ人とF1は相性が悪いんでしょうね)
来季に限っても、フランスGP・カナダGPは完全にアウト、ドイツGPもピンチと、
伝統あるGPの開催地が次々脱落していっています。
中国GPも資金難のうわさが流れていますし、今の金融危機下ではバーレーンGPも安心できません。
これらは資金難もさることながら、興行主のバーニーが高額の開催費を要求しているのが主因です。
商業的に成り立たない額を吹っかけるなんて、バーニーも耄碌したかな…と思わざるを得ません。
オーストラリアGPにも、ナイトレースにしろ!と難題を突きつけてますしねえ。
他にも、単一エンジン統一案とか、ポイント制からメダル制への移行とか。
来季仕様のマシンの醜いフォルムを見るだにつけ、現況打開のためには、
そろそろバーニーも引退されるのが宜しいでしょうと思われて仕方ありません。
(まあエンジンフィーの高騰を抑える必要があるのは確かですが、
 必要なのは80年代までのフォード・コスワース・DFVエンジンや
 90年代末のスーパテックエンジンみたいな、
 そこそこの値段でそこそこの戦闘力のカスタマーエンジンでしょう。)