東京バレエ団『ベジャール・ガラ』。


ギリシャの踊り」
振付:M.ベジャール 音楽:M.テオドラキス
Ⅰ.イントロダクション
Ⅱ.パ・ド・ドゥ(二人の若者):長瀬直義-横内国弘
Ⅲ.娘たちの踊り
Ⅳ.若者の踊り
Ⅴ.パ・ド・ドゥ:吉岡美佳-松下裕次
Ⅵ.ハサピコ:井脇幸江-木村和夫
Ⅶ.テーマとヴァリエーション ソロ:後藤晴雄
パ・ド・セット:西村真由美・乾友子・佐伯知香・奈良春夏・森志織・吉川留衣・河合眞里
Ⅷ:フィナーレ:全員

「中国のふしぎな役人」
振付:M.ベジャール 音楽:B.バルトーク
無頼漢の首領:平野玲
第二の無頼漢-娘:宮本祐宜
ジークフリート:柄本武尊
若い男:西村真由美
中国の役人:中島周

ボレロ
振付:M.ベジャール 音楽:M.ラヴェル
シルヴィ・ギエム
平野玲・松下裕次・長瀬直義・横内国弘

先週のフィギュア初めに引き続き、今週はバレエ初めというわけで。
兵庫県立芸術文化センターは2年ぶりくらいでしょうか。
多分2年前のNoismの公演以来かな。
今回は頑張って良い席を取ってみました。
どのぐらい良い席かというと、座ってはたと前を見ると、2列前にどこかで見たようなスキンヘッドが。
もしやと思ってよく見ると、芸監の飯田さん・芸監補の高岸さん・バレエミストレスの友田さんが揃い踏み(笑)。
やっぱ良い席は違うわ…むちゃむちゃよく見えて楽しかったです。
ちゃんとお値段にはそれなりの理由があるんですね。

・「ギリシャの踊り」
演目自体はもうこれで見るのは5回目ですが、なんか今回は今まで見たことないキャストが多くて新鮮。
ハサピコの組み合わせとかって初役だったりするんでしょうか?
去年の上野さん・高岸さんは初役だったように思うのですが。

後藤さんは調子は良かったと思うのですが、
だからといって決して安心できないのが後藤さんの油断ならないところ(笑)。
いやー、最後の暗転から照明が戻る瞬間にぐらつくとか勘弁して下さい。心臓に悪いです(苦笑)。
んー、でもやっぱりカッコイイです。好きです。

個人的には、年の初めから吉岡さんにお目にかかれて非常に縁起がよろしいです(笑)。
この衣装&振付、ちっちゃな顔・胴体に比して長い吉岡さんの手足、特に腕が際立ちますねー。
なんつーか、妖精体型だよなーとつくづく。
フィギュアスケートの川口結子さんとかと共通すると思うんですが。

木村さんのハサピコは、すっげー「清く正しく美しく」な感じで面白かったです。
学園ものを思わせるような、健全な男女交際という風情。
これもやはり木村さんの比類なき姿勢の良さのなせる技でしょうか。
オープニングからバーンと目に飛び込んでくるもんなー。

で、井脇さんのハサピコですよ。
んー、正直ちょっとミスキャストだったような気が。
なんかねー、きっと普通の意味でスタイルが良すぎるんですよね、井脇さん。
ちょっと刺激的過ぎて、
なんかこう「お茶の間で学園もののテレビを見てたら濡れ場が始まっちゃったよ」みたいな。
井脇さんの大人の色香は大好きなんですが、ちょっと「ギリシャの踊り」の世界との取り合わせが。

あとは、娘たちの踊りとかパ・ド・セットとか、すごく良かったんですけど、
小出さんがいないとなんだかちょっと物足らなく感じている自分がいたり。
やっぱ小出さんの存在感はおっきいんだなあ、と再認識しました。


・「中国のふしぎな役人」
カーテンコールの客席にあふれるびみょーな空気(苦笑)。
ひょっとしたらそうなるんじゃないかなーという半分予想通りでしたけど。
んー、正直よくわかんなかったです。
ベジャールがどうとか言うより、そもそものバルトークの構想が良くわからない。
観客の違和感とか困惑とかも意図しているのであれば、それは成功しているのかもしれませんが。
なんていうか、ある意味不条理もののホラー映画のような作品。
何度か見れば、また感想も変わってくるのかもしれませんが。

中島さんは『バイオハザード』な感じで熱演でした。
男性群舞は問答無用のカッコよさがありますねー。
背広&帽子でダンスって、粋な感じでステキ。
あと、照明と舞台の使い方が『春の祭典』そっくりで面白かったです。


・「ボレロ
2005年12月の「最後のボレロ」以来、実質3年ぶりに見るギエムの「ボレロ」。
…いやー、やっぱ何べん見てもすごいわ。ただただ感嘆。
そもそもギエムの「ボレロ」は再現性が非常に高くて、
ある意味では「いつも同じものを見て、同じ刺激を得て、同じ感想を書いている」とさえ言えるかもしれません。
でも、それがまたいいんだよなー。
常習性といい恍惚感といい、ギエムの「ボレロ」はいろんな意味で麻薬的な要素があるのでしょう(笑)。
いやでも、ほんとそう思いますよ。
あるいは、宗教的エクスタシー(法悦?)に通じるものがあるというか。
見ててこれだけ心拍数が上がって、拍動が大きくなって、手足がジーンとしてくる、
なんていう作品&ダンサーなんて他にありませんもの。

作品そのものは、土俗的・原始的・根源的な要素があると思うんですが、
ギエムの演技にはどこか都会的で洗練されたものがあるんですよね。
そして、陶酔がある一方で、理性というか、それを客観視している視線がどこか感じられて。

ベジャールは「一種一属」、カテゴライズ不能振付家と言われますが、
ギエムも同様に、どこか一種一属のダンサーだと思うんですよね。ギエムはギエムとしか言いようがない。
ギエムと「ボレロ」というのは、本当に特別な取り合わせなんだなーと思いました。

それにしても、いつも思うことですが、ギエムの腕にはいったいいくつ関節が存在しているのでしょうか…。
真剣にそう思いたくなるような腕のしなりです。つくづく凄い。

リズムの四天王もずいぶんと若返りましたね。
ギエム効果もあるとは思いますが、なかなかかっちょ良かったです。いいね~。