オマージュ・ア・ベジャール@世界バレエフェスティバル。

第12回世界バレエフェスティバル
<オマージュ・ア・ベジャール> 東京文化会館 8月16日

振付:モーリス・ベジャール
構成:ジル・ロマン
振付指導:小林十市那須野圭右

◆主な配役◆
<第一部>
「ルーミー」 音楽:クドシ・エルグネル
橋竜太、平野玲、松下裕次、氷室友、長瀬直義、横内国弘、
笠原亮、宮本祐宜、梅澤紘貴、中谷広貴、安田峻介、
柄本弾、佐々木源蔵、杉山優一、岡崎隼也、八木進

「ザ・カブキ」より由良之助のソロ 音楽:黛 敏郎
高岸直樹

「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」 音楽:クイーン
エリザベット・ロス

「鳥」 音楽:マノス・ハジダキス
木村和夫

高村順子、西村真由美、乾友子、佐伯知香、高木綾、奈良春夏、田中結子、
村上美香、岸本夏未、阪井麻美、矢島まい、渡辺理恵、川島麻実子、加茂雅子

「アダージェット」 音楽:グスタフ・マーラー
ジル・ロマン

<第二部>
「バクチIII」 音楽:インドの伝統音楽
シャクティ上野水香
シヴァ:後藤晴雄

「さすらう若者の歌」 音楽:グスタフ・マーラー
ローラン・イレール、マニュエル・ルグリ

ボレロ」 音楽:モーリス・ラヴェル
首藤康之
平野玲、松下裕次、長瀬直義、横内国弘

(東バのHPのキャスト表が間違ってますね。
 「鳥」の女性が「カブキ」の方に入れられていて、ハテ?と思ってしまいました。)


というわけで、今年の夏の個人的メイン・イベントがいよいよやってきました。
いや、世界バレエフェスは全部見てみたいですけどね、
いくらなんでも東京までそうそう観に行くわけにもいきませんから。
今回「これだけは!」と固く心に誓っていたのが、この<オマージュ・ア・ベジャール>でした。

まず冒頭、幕が上がると、スクリーンにベジャールの在りし日の姿が映し出され、ジルによるMCが。
もうここからジーンとしてしまいましたよ。やっぱこれは特別な公演なんだよな~。

そのままジルは舞台の向って左前方に進み出ますが、座席が3階左ブロックだったので視界の外へ。むう。
そのまま引き続き、東バの「ルーミー」が始まります。これは今回が東バの初演。
んー、踊り切れてなかったですね~。
「振り付け通り踊るのでいっぱいいっぱいです」というのがわかってしまいました。
はっちゃけた感じなり、集団としての陶酔感なりが、もっと出せればいいんでしょうけど。
翌日も同じ面子で同じ演目ですが、どうだったんでしょうね。見たかったな~。
次回以降の再演に期待。

で、終わって舞台中央で男性が集まっている後ろに、ジルと高岸さんがご登場。
ジルのMCのあと、高岸さんのソロが始まります。
いや~、相変わらずカッコイイ由良之助でございますよ…圧巻。好きだなあ。
「ルーミー」の男性がそのまま動員されて、義士役を勤めているんですが…
んー、正直ビミョーかも。
つか、「カブキ」を見たことがない人たちには演出意図がわからないのでは?(笑)

再びジルのMCが入り、ロスの被る黒いヴェールを剥ぎ取って、「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」の始まり。
いやー、ロスも素晴らしい熱演でした。動きが切れまくり。
またこう、ロスの白い肌に黒い衣装のコントラストがいいんだよね~。
アナバールで黒い肌に黒い衣装が同化してるのもいいんですけど。
…要するに、あの黒い衣装はエロくて非常によろしい、ということですな(笑)。
ただ、由良之助のソロ→「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」という流れがいささか唐突で、
周りのお客さんにはけっこう「え?」という雰囲気も感じました。
特に、見たことがない演目だった場合はちょっと微妙かもね~。
両方知ってると「まあそれはそれ」と思えるんですが。
この辺は、ガラ公演にMCを付けて全体の流れみたいなものを作ってしまったせいで、
かえって違和感が大きくなってしまった面もあるかもしれませんね~。
おまけに、同じように抜粋でつないで作ったハイライト集である
『愛、それはダンス』の編集が神過ぎるだけに、なおさらツギハギ感を感じてしまうのかも。

続きまして、こちらも今回が東バ初演の「鳥」。
女性陣に囲まれてハレム状態の木村さんが熱演(笑)。
これは初見だったんですが、なかなか面白い演目でした。こちらも再演希望~。
女性はビキニの上にロングスカートといった風情のへそ出し衣装に、
ファティマのような頭巾を被っていたのですが、
なんかあんましお色気ムンムンという感じじゃなかったですね。
あれは日欧のバレリーナの体型差がなせる技なんでしょうか。

さて、第一部の締めはジル御大自身による「アダージェット」。
これも初見なんで、比較対象がないのがアレですが、
この人のまったく衰えない「青年」感はなんなんでしょうね(笑)。
人生の孤独について悩む青年、という風情。
もちろん、ダンサーとしても衰えを見せず力量をキープし続けるのもスゴイです。


休憩を挟んで第二部。
「バクチIII」は、水香ちゃんの真価を見た感じ。
この演目はインドの神様の夫婦を演じるので、言うなればダンサーは「神の器」。
「神の器」というのは「美しくて身体能力が高くて空っぽ」というのが最適なわけで、
水香ちゃんはこれにばっちし。ほんと日本人離れした身体の持ち主でいらっしゃいますよ。
これであとは、しっかり何かが降りてきてくれれば言うことなしなんだけど…。
後藤さんも熱演でグー。

イレール&ルグリの「さすらう若者の歌」は、2年前の「ルグリと輝ける仲間たち」でも見ています。
なんつーか、「永遠の若者」ですね(笑)。
とはいえ、パンフを読んだ感じだとイレールは「これにてお蔵入り」という考えなんでしょうか。
「いじめられっ子」イレールと「いじめっ子」ルグリによる支配と従属の踊りで、
最後はイレールがドナドナ状態で連れて行かれるのですが…
んー、これが何度見てもいまいちピンと来ないのは、やっぱ僕がノンケだからなんでしょうね(苦笑)。
とはいえ、非常に素晴らしい演技であることは確かです。
男性ダンサー同士でのこういうパートナーシップって、ほんと珍しいですよね。

以下、イレールの顔がわかる人にしかわからない業務連絡なのですが(そんな人がどれだけいるのか?)、
この記事の写真の人って、イレールですよねえ??
イレールの顔って近くで見たことないし、
パンフの写真は小さいか「これって何年前のよ?」というやつばっかしなので…(笑)。

大トリは首藤さんの「ボレロ」。
もうこれだけは見逃せまい!ということで東京まで行ってきたのでした。
5年前に首藤さんが東バを退団されたときに、「ボレロ」も封印しちゃったんですよね~。
というわけで、封印前のは見たことがなくて、比較対象がない感想ですが…。
いやー、すごかった。とにかくすごかった。
出だしはものすごく繊細なボレロで、手の動きなんかはギエムのボレロを思い出させるものがあります。
で、その繊細なボレロが、途中でガラリと一変するんですよね。
赤いお盆の後ろの方でリズムの男性陣をオラオラとあおって、
テーブルをバンバン叩くあたりからもうエネルギー全開、はじけまくってます。
あれはきっとあそこで何かが首藤さんに降りて来るんだよな~。
なんかもう、ニヤリと笑みを浮かべる首藤さんは不気味ですらありました(笑)。
はじけまくった分だけカーテンコールで放心状態の首藤さんにも激萌え。

いやいやいやいや、すごいもん見ちゃったよ~。東京まで見に行った甲斐がありました。
てゆーか、こんな素晴らしい演目を本当に封印しちゃうんですかねー。
これからが円熟期でしょうに。もったいない!また見たいよ~。

カーテンコールでは今度はベジャールを映したモニターが上から降りてきて、これがまたジーンときました。
素晴らしい公演でした。見に行って本当に良かった…。
翌日の千秋楽公演も観たかったですけどねえ~。