『ルグリと輝ける世界のスターたち』。

『マニュエル・ルグリの新しき世界』 Bプロ ルグリと輝ける世界のスターたち

【第1部】
チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
ヘザー・オグデン ギヨーム・コテ

「モペイ」
フリーデマン・フォーゲル

スリンガーランド」
アニエス・ルテステュ パトリック・ド・バナ

「アザー・ダンス」
オレリー・デュポン デヴィッド・ホールバーグ

「優しい嘘」
シルヴィ・ギエム マニュエル・ルグリ

【第2部】
マリー・アントワネット
アニエス・ルテステュ パトリック・ド・バナ

「ハロ」
ヘレナ・マーティン

ドニゼッティ・パ・ド・ドゥ」
上野水香 高岸直樹

失われた時を求めて」 "モレルとサン・ルー"
ギヨーム・コテ デヴィッド・ホールバーグ

「三人姉妹」
シルヴィ・ギエム マニュエル・ルグリ



さて、だいぶ前の公演で、もはや記憶があいまいなところもありますが(苦笑)。
ルグリ&ギエムのゴールデンタッグ復活!とあっては、さすがに観に行かないわけにはいかないでしょう。
実に15年ぶりのことらしいですよ。歳月は人を変えるのですねー。
ダンサーとして30歳で袂を分かって、45歳で再び一緒に踊るということですか。
なんとなく「人生の節目」というものについて考えてしまいます。

感想は順を追って書こうかと思ったのですが、とりあえずルグリ&ギエムの感想だけ先に書いてしまいましょう。
○「優しい嘘」(振付:I.キリアン 音楽:C.モンテヴェルディ、C.ジェズアルド、グレゴリオ聖歌
まずはコンテンポラリー。キリアンがパリオペのために振付けた作品です。
たしか『スーパーバレエレッスン』でも取り上げてましたっけ。
2007年の来日公演でギエムがニコラ・ル・リッシュと踊った時は、残念ながら観てません。

いやー、素晴らしかったです。
なんかもう、2人とも素晴らしすぎて、どこを見ていいのか…という感じでした(笑)。
始まった時点では2人が舞台中央で前後に重なった状態でいるんですが、
それが左右にパッと散った瞬間、「ええ~、どっち見たらいいの!?」っていう。
なんかねー、2人のバランスがものすごく高いレベルで均衡してるんですよね。
ある意味ちょっと無機的な感じすらすると思うんですけどね(動きが人間離れしてるから)、でもそれがいい。
ただただ「ええもん見せてもらいました」ということに尽きます。眼福。

○「三人姉妹」(振付:K.マクミラン 音楽:P.チャイコフスキー
こちらはギエムお得意のレパートリー。
すいません、幕が上がって照明がついた瞬間に笑ってしまいました。
だってルグリの軍服姿が猛烈に似合わないんですもん!(笑)
もうね、なんか学生服にしか見えなくて。一瞬「金色夜叉?」って思っちゃいましたよ。
そして、帽子を投げ捨てる動作がすっげー無駄に華麗。w

解説によると
「道ならぬ恋にひとときの炎を燃やすマーシャ(※人妻です)とヴェルシーニンの激しいパ・ド・ドゥ」
だそうですが、んー、なんかルグリ先生がむっちゃポチっぽい。
「喜びのあまりご主人様に猛烈にじゃれ付くポチ」という感じでした。
そして最後にピャーっと猛ダッシュで立ち去るポチ、
「あらなんか行っちゃったわよ、また戻ってくるかしらねえ」という風情のギエム。
(※以上、あくまで「こう見えました」という感想です。あしからず。)

楽しかったですけどね、ただ、ルグリ先生でも似合わない役もあるのね~、と。
ま、最近の十八番の『オネーギン』にしても、およそ「ロシアの田舎貴族」には見えませんけど(笑)。
基本的に超絶端正だからなールグリ先生は。そこが好きなのですが。

さて、以下はその他の演目の感想です。
【第1部】
○「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
オグデン&コテという、ナショナル・バレエ・オブ・カナダの若手プリンシパルダンサーの2人。
んー、「ガラらしい華麗なパ・ド・ドゥだった」というあやふやな記憶しかないな。
まあ、バランシン作品に対する感想としては正しいのかもしれない(笑)。
バランシン作品て個人的にあんまし相性良くないんだよなー。

○「モペイ」
フォーゲルくんカニ歩きで登場。
えー、作品としては、「むっちゃ陽性にしたベジャールの『アダージェット』」ていう感じですかねー。
論より証拠、ようつべに動画がありますのでどうぞ。

なんていうか、「どうしてこうなった」感を楽しむ作品なんですかね。
イケメン男子の使い方としてひじょーに間違ってる気が(笑)。
無駄にイケメン&ナイスバルク。プルシェンコのことが連想されてなりませんでした。
関西でやったら会場に笑いが起きたと思うんだけどな~。
個人的にはジルが演じてるところが見てみたい気がしますが、見なくても予想はつきそうな気も。

○「スリンガーランド」
むう、なんだかマジで全然記憶がないぞ(苦笑)。

○「アザー・ダンス」
当初キャストだったフォーゲルくんでも同じだったとは思いますが(リハで首を痛めてキャスト変更)、
釣り合い的に「デュポン様とお付きの若者」という絵でしたね(笑)。
しかしデュポン様はお美しかったです。

【第2部】
○「マリー・アントワネット
ルテステュとバナが、恐ろしく倒錯的な空間を作り出していました(笑)。バナの趣味でしょうか。
なんつーか、こっちの方が「ひとときの炎を燃やす」というのがピタッと来る感じ。
「(自分の)世界がもうじき終わる」と思ったら、やっぱどうでもよくなるんですかね…とか思ったり。
それにしても、謎のスケスケナイロン衣装でした。
下着の上にレインコートを羽織って踊ってるみたい。

○「ハロ」
「そうですか」という一言。すんません。

○「ドニゼッティ・パ・ド・ドゥ」
「高岸さんは水香ちゃんの取説を持ってるんだなあ」としみじみ。
上野さんがのびのび踊ってる感じが非常によろしかったです。
キャスト替わりでかえって良かったんじゃないのかな~。
(本来のパートナーはホールバーグくん)

○「失われた時を求めて」 "モレルとサン・ルー"
うーん、イケメン2人の競演で、パフォーマンスも良かったんですが、
なんかもうちょっとこう物足りん感じも。
この手の「男の子2人」演目は、「2人はライバル!」みたいな雰囲気か(『ギリシャの踊り』の若者とか)
もっとホモホモしい支配―被支配な雰囲気(『さすらう若者の歌』とか)がほしい気がしましたです。
その意味では、男性同士であってもパートナーシップが必要な演目なのかもしれませんねー。