原作と映像化の間。

先月からずーっと書いていた原稿が、ようやく書き上がりました。やれやれ。
多少手直しはありそうですが、基本的にはOKが出たので一安心。

というわけで、この間ほとんど出歩かなかったこともあり、ろくに書くことがなかったのですが、
数少ない外出の機会に、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』を見ました。
今さら感想でもないかと思いますが、一応書いておくと、いろいろ面白かったです。
最後はやっぱりなんだか最終決戦になっちゃうのね、とか、
(なんかスター・トレックDS9のファンタジー版を見てる気分になりました。
もっとも、DS9のラストはSFというよりファンタジーと違うんか、という感じですが。)
ゴーレムの召喚魔法を唱えるマクゴナガル先生がやけに楽しそうだとか。
何より、ベラトリックスのコスプレ変装をするハーマイオニーがいいです(笑)。

ツッコミどころもちろんいろいろあります。
原作そのものについてはさておいて、映画としてということで言えば、
一番はやっぱり、ダンブルドア先生の弟と妹が突然登場することでしょうね。しかも弟めっちゃ強いし。
全体に、説明なしで驚きの展開が!というのがいろいろありました。

これはつまり、原作にはたくさん情報量が詰まったいるのを、
映画の尺に話を収めるためにいろいろ端折ったらこうなりました、ということなわけです。
きっと、ストーリーの要約の仕方としてはとても上手にまとめてあって、
だからこそ、原作を読んでいない僕でも全体像がある程度理解できるようになっているのですが、
むしろ、一緒に見た相手は原作を読んでいたのですが、
「そこを端折ったらアカンやろ」というのがかえって気になってしまったようでした。

で。
かたや、現在NHKのBSプレミアムで放送中のアニメ『へうげもの』は欠かさず見ているのですが、
こちらは原作に相当忠実に作っています。
あんまり忠実に作りすぎて、全39話なのにちっとも話が進みませんが。
あれって利休が死ぬとこまでも行かないんじゃないのかなー。どうするんだろう。ぎりぎりそこまで?

…というか、今まで気が付いてなかったんですけど、
いつの間にか「原作」じゃなくて「原案」になってたんですね。
あれで「原作」でなかったら、「原作」と銘打てるようなアニメってなくなっちゃうと思うけどな(苦笑)。

それはさておき、じゃあ原作に忠実に作ったらそれでめでたしめでたしなのかというと、
実のところ、見ていてそれはそれで楽しいけれど、ワクワクはしないんですよね。
「これからどうなるんだろう?」というオドロキがない、というか。
「知っている話の絵が動いて音が出る」という感じなんです。
なので、加藤清正の「ちょっちゅね」を具志堅さん本人の声で聞けたりするとめっちゃ嬉しいですけど、
(これは相当笑わせてもらいましたが、でも他のセリフはどーすんだろ)
毎週割と淡々と見ています。
あと、原作の改変が少ないと、数少ない改変箇所をさがすのは、それはそれで楽しいですけれど。
「縛りはNGだけど媚薬はOK」というNHKの基準は良くわかりません(笑)。

そこで、原作と映像化作品と両方味わって、自分が一番満足した作品は何だったんだろう?と考えた時に、
頭に思い浮かんだのは、『精霊の守り人』でした。
これのアニメは素晴らしい出来ですが、原作そのままではなくて、原作を膨らませてあるんですよね。
上橋菜穂子さんの原作はこれがまた素晴らしい小説で、未読の方にはぜひおすすめしたい作品ですが、
文庫本一冊に収まるサイズの物語で(シリーズ全体だとかなり長いけど)、
いろいろと読み手が想像できる自由度があるというところが、この場合のポイントなのでしょう。
そこをうまく活かせば、映像をいい意味で「同じだけど違う作品」にできる、と。
これに関しては、原作が小説か漫画かという違いも大きくて、
小説の映像化は、「実際に視覚化するとこうなるのか!」っていう驚きがプラス要素になるのだと思います。
そういう意味では、小説の映像化は、当り外れの差も大きいけど、
大化けする可能性があるということなのかなあ、と思われたことでした。