ファウスト・メフィスト@クレオ大阪西館。

ファウスト・メフィスト@クレオ大阪西館
出演:小林十市 大柴タクマ
 第1場 「前狂言
ある男が、西から来た男と、この舞台をどういうものにするか相談している。
第2場 「予知夢」
誰かと旅をしているファウストの夢。
第3場 「書斎」
夢から覚めたファウストは、自分の書斎にいた。そこに、悪魔メフィストが訪れ、言葉巧みにファウストを外の世界へ誘い出す。
第4場 「酒場」
旅立ったファウストは、酒場でメフィストに若返りの薬の入った酒を飲まされる。
第5場 「恋するファウスト
若返ったファウスト。ある女性と出会い、恋に落ちる。
第6場 「ワルプルギスの夜
メフィストに饗宴に誘われたファウストは、最愛の女性のことを忘れ、饗宴を楽しむ。
第7場 「牢獄」
ファウストの居ない間に、女性は牢獄に幽閉される。ファウストは女性を救おうとするが、女性は処刑され、彼は絶望の中、メフィストに連れ去られる。
第8場 「忘却」
過去の記憶を忘れた東の男が、西の男に嘲笑される。
第9場 「deja vu
昔見た事のある夢を繰り返すファウスト
第10場 「悪魔の囁き」
メフィストから大いなる力を授けられたファウストは、この世のありとあらゆる経験を経て、人生に満足し、絶命する。
第11場 「天上の詩」
ファウストとの賭けに勝利し、魂を奪おうとするメフィスト。だが、最愛の人の祈りにより、ファウストの魂は救われる。

卓越した二人のダンサーによる、素晴らしい舞台でした。
公演までに「ファウスト」を読みたかったのですが、残念ながらそんな時間の余裕はなく。
(それどころか、そもそも公演が今日なのを当日の昼まで忘れてました)
「まずいなー」と思っていたんですが、↑に引用した内容のプリントが配られて一安心。
始まってみると、ストーリー的にはこの内容ですべてが言い尽くされていました。
要するに、『ファウスト』の第一部の翻案なわけですね。

第1場は、小林さんと大柴さんがこの舞台の企画の打ち合わせをしている場面から、物語が始まります。
で、「ヒップホップがいい」「ワーグナーがいい」など、
どんな舞台にしたいかについて小林さんがいろいろ(むちゃな)リクエストを出すのですが、
もうその時点で、「小林さん」=「東の男」=「ファウスト」、「大柴さん」=「西の男」=「メフィスト」であることが
わかるという、メタな導入です。
他にも、「ファウストってたくさん登場人物がいるのに、二人でやるなんて無理じゃね?」
「ってゆーか、女の子出てくるけどどーすんの」という気になるところがいろいろ指摘されるんですが、
それがすべてあとできちんと回収されるという、とってもきちっとした構成の舞台でした。

演出で一番面白かったのは、上記の「女の子(グレートヒェン)」をどう処理するかという話で、
1枚の赤い布を女性に「見立てる」という方法が実に秀逸。
処刑のシーンでメフィストが歌舞伎の幕引きの時の拍子木の調子をはさみで取っていたので、
これは「見立て」の手法をかなり意識的に使われたのかなあと思うのですが。
赤はやっぱり「血」=「生」=「性」なんでしょうね。血のエロチシズム。
処刑のシーンのメフィストの狂乱が怖かった…。

作品全体を通しても、第1場・2場で先々起こることを提示して、第9場・10場でそこに戻ってくるという、
きれいな円環構造になっています。
全体にすごくシンプルですきっとした作品でした。こういうの好きです。
全体の構造をわかった上で、願わくばもう一度見てみたいですね。ぜひ再演を!
あるいは、違うキャストで見るとどう見えるのかなーというのも興味があります。
今回の作品は設定そのものが小林さん・大柴さんという人格に大きく依存していますが、
たぶん、手を加えれば一般的な形にすることも可能だと思うので。

お二人のダンスも、とても素晴らしかったです。
洗練されていて、それでいて情緒的な小林さんと、豪快でダイナミックな大柴さんと、
同じ振付で踊っているところでも、それぞれに違いが見えて。
あれだけ身体が自由に使えて、いろいろなことが表現できたら、本当に気持ちいいんでしょうね。
とりあえず、見ている側はとても気持ち良かったです。

あと、大阪公演は千秋楽かつ大柴さんの地元ということで、「ボーナス・トラック」がついていました。
金刺わたるさん・天野弓彦さんを交えた、楽屋落ち的後日譚で、文字通り「神々の遊び」ってやつですね(笑)。
なにしろ、金刺さん=天使、天野さん=神様なので。
そして、なるほどグレートヒェン=クリスティーヌさんなのか、と腑に落ちたところで楽しく幕なのでした。

(おまけ)
クレオ大阪西館に展示されていたモニュメント(? ちなみに段ボール製)
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なんなのかこの妙な力の入り具合はw
とっても手ごろなサイズのいいホールだったんですが、こちらも橋下市政で廃止案が出ているそうで(ため息)。
なんとか存続してもらいたいものですね。