東京バレエ団「50周年祝祭ガラ」。

東京バレエ団 50周年祝祭ガラ
ペトルーシュカ
振付M.フォーキン、音楽I.ストラヴィンスキー
ペトルーシュカ:ウラジミール・マラーホフ
バレリーナ:川島麻実子
ムーア人:森川茉央
シャルラタン:高岸直樹

「スプリング・アンド・フォール」
振付J.ノイマイヤー、音楽A.ドヴォルザーク
沖香菜子‐梅澤紘貴

「ラ・バヤデール」
振付N.マカロワ(M.プティパ版による)、音楽L.ミンスク、編曲J.ランチベリー
ニキヤ:上野水香
ソロル:柄本弾
第一ヴァリエーション:岸本夏未
第二ヴァリエーション:奈良春夏
第三ヴァリエーション:高木綾

「オネーギン」より第3幕のパ・ド・ドゥ
振付J.クランコ、音楽P.チャイコフスキー
オネーギン:マニュエル・ルグリ
タチヤーナ:吉岡美佳

ボレロ
振付M.ベジャール、音楽M.ラヴェル
シルヴィ・ギエム
森川茉央、杉山優一、永田雄大、岸本秀雄

指揮:ワレリー・オブジャニコフ 演奏:大阪交響楽団 ピアノ:内藤佳有

東京バレエ団の公演を見るのは2年ぶりです。
いろいろあってバレエ鑑賞から少し遠ざかっていたんですが、
こればかりは見に行かんわけにもいかんだろうと。
東京も大阪もスケジュールが合わなくて、三重までちょっと遠出です。

チケットで出遅れたので、「ネットでいいチケット出てこないかなー」とのんびり構えていたら、
8月にギエムの「来年で引退」宣言が出て、慌てて、
残ってるチケットのうち、いちばんいい席を押さえました(苦笑)。
引退宣言してなくったって、マラーホフにしてもルグリにしても、
いつが最後になったっておかしくないですからねー。
見られるうちに見とかないと。

2年ぶりに見る東京バレエ団は、メンバーが変わりすぎてて、個体識別がぜんぜんできませんでした。うーむ。
女性はまだ何とかわかるんですが、男性がほんとわかんなくて。
ボレロ」の四天王ですら、遠目では、杉山くんと岸本くんの区別が付きませんでした。
まあ、似てるんですけどね、雰囲気。
以前、「トップが短期間でころころ変わると、感情移入できなくなる」と、
宝塚ファンの人が言ってましたが、こういう気分なのかなあと。
よくわかりませんが、AKB48で推しメンが卒業しちゃった人の気分ていうのも、こんな感じなんですかねー。

そんな浦島太郎気分ですが、ともあれレビューをば。

・「ペトルーシュカ
さすが持ち役だけあって、マラーホフ、安定の卑屈さ。そうはいっても初見なんですけどね。
ほんとは6年前に見られるはずだったのですが、マラーホフがケガで降板したので。

まあ、そもそもが変なお話だからなあ。
名作というよりは、「初演から100年たっても問題作」という感じですよね(そこがいい)。
ひも(ムーア人)つきの女(バレリーナ)に横恋慕して、刃傷沙汰にあう気の弱い男(ペトルーシュカ)ですから。
ストラヴィンスキーの音楽と相まって、まがまがしい感じが素敵です。
で、きっと川島さんの無機的な雰囲気はバレリーナにぴったりだろうと思っていたのですが、
予想通りはまってました。
ムーア人もいい感じにゲスかったです。
そして、やっぱり胡散臭い高岸さんのシャルラタンが絶妙。
その他の人たちでは、悪魔の扮装をした人の動きがキレッキレで「誰!?」って思ったんですが、
ネットで見たところ、入戸野くんという若手の期待株なんですか。なるほど道理で。

・「スプリング・アンド・フォール」
うーん、初見だったんですが、「ノイマイヤーらしく、清く美しい作品」という以外に、あまり感想が(苦笑)。
梅澤くんはすっかり存在感が出てきましたね。

・「ラ・バヤデール」
今回、思いの外よかったのがこれでした。
上野さん―弾くんのパ・ド・ドゥを見るのは初めてだったんですが、相性いいですね。
全幕だとどうなのかと言われると、また違うのかもしれませんが。機会があれば見てみたいものです。

・「オネーギン」
良かった!
ルグリ先生は、相変わらず圧倒的な存在感のスケベ中年で素敵でしたが、
対して、吉岡さんのタチヤーナがすごく良かったです。
オネーギンからのアプローチに、震え、揺らぎ、よろめき、踏みとどまるという、
心の動きが、鮮やかに表現されていました。
これなら、よろめいた瞬間、ルグリならずとも「勝った!」って思うよなー、と。
吉岡さん、カーテンコールで最初は放心したようになってましたけど、素晴らしい熱演でした。
ほんといい作品ですよね、これ。また上演してほしいけど…どうかなあ。

・「ボレロ
実は、いちばん心配してたのがこれです。
心配の種は、ギエムはもちろん東バでもなく、オケ。
「ひょっとして生オケ?」と思っていたら、東京で見たお友達から、そうだったと聞かされて、
しかも、トロンボーンがやらかしたと聞かされて、やっぱり……と。
ボレロを生オケでやるのって、難しいですよねえ。
2年前の「バレエの饗宴」で、「カブキ」を生演奏でやった時もそうでしたけど。
が、今日は杞憂でした。オケもいい出来でした!
トロンボーンがちょっと不穏な気配を醸し出してましたけど、気配で済みました(笑)。
いい演奏なら、やっぱり録音よりも生オケの方がいいですねえ。

ギエムは、相変わらず動きがキレッキレで、ピタッと止まって、
別に引退なんてしなくていいのにと思ってしまいました。
プリセツカヤみたいに、いつまでも踊ってるタイプだと思ってたんだけどなー。
まあ、「最後のボレロ」と銘打ってからでも何回目だろうという気がするので、
心配しなくてもファーブ兄貴のようにしれっと現役続行してくれるのかもしれませんが。てゆーか、して。
ほんと、いつまででも見ていたいです。
毎回の演技の中でもそう思います。今日も、見ていて「このままこの時間が終わってほしくない」と思いました。
豊饒な、至福の20分間です。

で、若い東バのみなさんとの取り合わせはどうなんだろう?と思ってたんですが、ことのほかよかったですね。
「若い衆に囲まれるギエム」というのも、それはそれでいい感じ。
松野くんが向かって左端にいたんですが、とにかく大きくて目立ちます(笑)。大きいことは良いことだ。

というわけで、楽しい3時間でした♪(6時半開演、9時半終演!)