Noism06「TRIPLE VISION」。

Noism06「TRIPLE VISION」@びわ湖ホール 12月17日

というわけで、5月に引き続きNoism06の公演を見てきました。
びわ湖の中ホールは久々だったんですが、設備はすごく良いんですけど、
一階席はあまり段差がなくて、結構前の席の人の頭が気になりました。
舞台中央の一番前の辺りが隠れちゃうとちょっとね~。

で、演目ですが、今回は外部振付家招聘企画ということで、
black ice(ver:06) 振付:金森穣
solo,solo 振付:大植真太郎
Siboney 振付:稲尾芳文、クリスティン・ヒョット・稲尾
という3部構成。

black iceは、なんというか「気持ち悪さ」が残る作品でした。
舞台の上は菱型のオブジェがひとつ立っているだけ、
ダンサーは表情の動きがなくて、振り付けもとても無機的、
音楽は、はじめは無音、鳴り始めてからも、最後まであくまでBGMとしての扱い。
「非日常」というものを強く意識して明確化した作りなのかなーと感じました。
で、そこで男女を基本とした「関係」が展開されるんですが、
これがまたなんとなく「気持ちが悪い」。
引っかかるというか、なんだかよくわからない異物感が後味にすごく残るんですよね。
で、それがイイ(笑 でも、多分そうなんだと思う)。

なんていうか、動作がオン/オフなんです。
で、舞台上にオンの人とオフの人が混在しながら入れ替わって展開する。
例えば、静止画の中で一部だけが動いていて、その動作が止まった瞬間、別の部分が動き出す、
その連続で全体が流れていって、最終的に収束する。
「舞台上に時間の断層が人工的に作り出される」様子を見たような経験でした。

あと、舞台装置の使い方と視覚効果は「おおっ!」と思いました。
オブジェが、それそのものの視覚効果/映像を投影するスクリーン/影を作り出す遮蔽物
/反射によって空間と床面に光を当てる反射材 といういろんな役目を果たしていて、
シンプルな舞台装置で、これだけ多様な空間を作り出し、
そうやって分割した空間を表現に活用するのはすごいな、と。
つくづくコンテンポラリーは総合芸術ですね~。

solo,soloは一転、非常に楽しい作品。「遊び」の要素がちりばめられてるんですよね。
動作そのものの面白さ。
セリフも面白さを狙ってるところがあるし、
その上にダブルミーニングといった言葉遊び的な小道具などとして使われたりもする。
(アフタートークでもあ言われてましたけど、どうも「多義性」というのは
 大植さんの特色みたいですね。「煮え切らなさ」と表現されてましたが 笑)
舞台転換の時点から小芝居が始まるけれど、それは舞台の中に「音響係」が存在することによって、
舞台/舞台を客観的に見ているセクション/その外側で見ている観客という構造になる。
「あはは」という直接的な面白さから、「なるほどね」的な面白さまで、
いろいろ楽しめる舞台でした。
ちなみに、この手の遊びは観客に非常にウケていました。
大植さん(と稲尾さん)は京都のご出身らしいのですが、
やはり関西テイストにハマるんでしょうかね(笑)。
言葉遊びの「は行」のネタが「比叡山」だったんですけど、このネタはびわ湖バージョン??
パンフに載ってた振付家3人の鼎談にも端々に関西弁が登場していて、読んでて親近感を覚えました。

Siboneyは、もっとも「ダンス」に振れている作品でした。
理屈じゃなくて感性に直接訴えかけてくる感じ。
音楽そのものの内容というよりは、その基本になってるビート感が、例えば体全体の動作がない間も、
体の中で刻まれてるビートが見えるように感じられるような印象を受けました。
で、視覚効果についても、こちらは画面としての舞台全体の割付が整然としている感じで、
前面のソロ/後景の群舞という配置とかその展開とかが、それ自体見た目にとても印象的でした。
(非常に面白かったんですけど、こういう面白さを言語化して表現する語彙が
 自分の中にまだあまりないようです)

というわけで、とっても面白い舞台でした。
コンテンポラリーは見ていて非常に心地よく脳みそが疲労するということも再確認しました(笑)。
踊ってるほうもすさまじい運動量で、おそらく双方ともに
「3本立てでもう限界です!おなか一杯!」なのではないでしょうか。満足。

アフタートークの締めの質問で、
ダンサーには「金森穣さんから一番求められているものはなんだと感じていますか?」
金森穣さんには「今一番気になるダンサー・カンパニー・演目はなんですか」
という質問が出たのですが、
前者に対する回答が「『全部出せ!』『もっと出せ!』ということです(笑)。」
後者に対する回答が「一番気になるダンサーはNoismのダンサーです。
一番気になるカンパニーはNoismです。一番気になる演目はNoismの次の作品です」
でした。うーん、納得の行くこと極まりなし。
「オレさま印」ですよね(笑)。そこがまたステキ(笑)。