両雄去る。

来週末からGPシリーズ開幕だというのに、フィギュアスケートファンには悲しいお知らせが続いております。
先日のバトル引退宣言に続き、昨日はランビの引退が発表されました…。
ショーック!

これで、2006年トリノ五輪男女シングルの全メダリストは、アマチュア競技から引退状態に。
以前06-07シーズンのアサインについての記事で、男子について
「その他上位陣はオリンピック翌年と思えないほど変動なし。えらくレベルが高いな~。」
と書いたんですが、残念ながら、バンクーバー五輪までそのまま、とはいきませんでした。
(女子の方は、3人ともトリノ直後で事実上引退状態になってましたね。)

まあねー、フィギュアスケートをアマチュアでずっと続けていくのって、難しいとは思うんですよ。
フィギュアスケートって、芸術への偏差が大きい独特な競技だと思うんですよね。
同じく芸術性の要素が求められる体操・新体操・シンクロなんかはプロはないし、
逆に、身体能力が求められる芸術であるダンスやバレエには、スポーツ競技としての大会はない。
フィギュアスケートの場合、アマチュアの試合は身体への負担や金銭面の負担が大きくて、
得られるものは喜びと名誉とプロ転向後の格ということになるでしょう。
でも、「滑ることで何かを表現する」という喜びであれば、プロに転向しても追求できますしね。
で、世界選手権で勝ってしまうと、次の目標という点では、モチベーションを維持するのは難しいだろうな、と。
特に二人の場合、五輪のメダルも取ってしまっているので、残された目標は「金メダル」限定になるし、
それを目標に2年間ケガと付き合いながら競技を続けていくのは、やっぱりしんどいだろうな、と。

もちろん、二人の演技を大会でいつまでも見ていたかったです。
でも、ケガを抱える二人にそれを望むのも、ファンとしてのエゴかなあと思ってしまいます。
マチュアだろうがプロだろうが、フィギュアスケーターであることに変わりはありません。
これからはプロとして、いい演技をずっと見せてほしいです。
二人ともいっぱい来日してね~。できるだけ見に行くからさ。応援してます!


それにしても、今にして思えば、東京での07年世界選手権の男子シングルは、
上位選手の欠場がほとんどなかったという点で、実にまれな大会だったんですね。
(主な欠場選手ってKVDPだけだったし。クリムキンが国内選考で負けたのは悲しかったけど…。)
つくづく、見に行っておいてほんっっとうに良かったと思います。
やっぱりフィギュアスケートは生モノなんだなあ。機会があったら逃しちゃダメなんですね。


昔からのファンの特権で、個人的な思い出話を一つ。
2003年のNHK杯は京都アクアリーナで開催されたんですが、
キャパが小さかったこともあってかチケット争奪戦も大激戦で、
僕は結局金曜日しか見に行けませんでした。
それでも、女子シングルSP・ペアフリー・アイスダンスODと生で見ることができて、大満足だったのですが。
(なんたって、スルツカヤとロバチェワ&アベルブフの演技を生で見られたんだもの)

で、競技の合間の製氷時間に客席をふと見渡すと、
すぐ近くをなんとバトルが歩いているではありませんか!
前年に完全にシニアに移行して、いきなりNHK杯で2位に入ったバトルは、
当時からものすごい人気で、周囲の女の子たちはキャーキャー歓声を上げていたのですが、
バトルはそれをうっとーしそうにブスーッとした表情で歩いて行ったのでした(笑)。
きっと、あんまし騒がれたくなかったのと(競技の前日だし)、まだ若かったんだよね~。
まあそんなこともあって、ずいぶん前から彼は個人的に特別な選手でした。
デビュー直後から応援してきた選手が引退するというのは、
仕方のないこととはいえ、やっぱり寂しいですね。

ランビの場合は、むしろ05年の世界選手権から急激に台頭してきてビックリしました。
もちろん、前年の世界選手権でも4位に入賞していましたけど、
地方だと当時はほとんど女子以外の競技を見られる環境ではありませんでしたし、
GPシリーズでの実績はほとんどなかったですからね。

とかくジャンプばかりにスポットライトが当たりがちだったフィギュアスケート界で、
スピン・ステップ・スケーティングといった他の要素でもファンを魅了した彼らが果たした役割は、
とてつもなく大きいのではないかと思っています。
彼らは新採点方式の申し子であり、
彼らのような演技が評価されるようになったのが、新採点方式のいいところなのでしょう、きっと。