文楽への援護射撃。

文楽:大阪に特別な意味 キーンさん「ショック」 橋下市長の補助金凍結に憂慮(毎日新聞)
 日本文学研究者で08年に文化勲章受章、今月8日には念願の日本国籍を取得したコロンビア大学名誉教授、ドナルド・キーンさん(89)が毎日新聞のインタビューに答え、大阪市による財団法人「文楽協会」への補助金(5200万円)凍結を憂慮。「ショックです。文楽は大阪に特別な意味があります」と大阪発祥の世界無形文化遺産人形浄瑠璃 文楽」へ援助継続を要望した。日本の伝統芸能を愛するキーンさんの発言は波紋を広げそうだ。
キーンさんは1953年、英ケンブリッジ大から京都大大学院に留学。近松門左衛門ら日本文学の研究、翻訳で業績を上げる傍ら、能の謡曲狂言の稽古(けいこ)に励み、日本の伝統芸能に造詣が深い。
豊竹山城少掾(やましろのしょうじょう)ら名人ひしめく黄金時代の文楽も、当時の四ツ橋文楽座などで鑑賞した。「黄金時代でしたが、いつも大勢の観客が居たわけではありません」
橋下徹大阪市長大阪府知事時代に「二度と見ることはない」と言ったことには、「芸術はすぐ分かるものではないです。すぐ分かる人形芝居は子供向けのもの。文楽は洗練された芸術です。300年以上前からあり、世界的にも認められています」と静かな口調ながら力説。「オペラも初めて見ると退屈です。しかしあらゆる国で歌劇場が造られています。それを欲しがる人はいます。そういう人たちを無視する理由は無いんです」と話した。【宮辻政夫】
やっとこういう声が出てきたか、と。
大阪の各種文化事業がこの先どうなるかというのはこのところの懸案なのですが、
個人的にはその中でも文楽が一番優先順位の高い問題だよなあと思っていました。
というのは、上の記事中にもあるように、さまざまな古典芸能の中でも文楽は大阪との関わりが深く、
大阪の芸能として存続することに、特別な意味があると思うからです。
だからこそ、国立文楽劇場も大阪にあるわけで。

それともう一つ、日本の古典芸能の中で、文楽は他の芸能に比してとりわけすそ野が狭く、
行政による補助なしでは財政的に成り立ちえないからです。
能・狂言を習う一般の人というのはある程度いても、文楽を習う一般の人というのはほとんどいませんよね。
それに、歌舞伎・能・狂言の役者さんは、他の演劇やテレビ・映画の世界に越境することも可能ですが、
文楽は人形を遣って上演するという制約があるので、基本的に閉じた世界になります。
だから、一般に名の知られている歌舞伎・能・狂言の役者さんはいても、
文楽太夫さんや人形遣いさんで一般に名を知られている人はなかなかいません。

橋下市長の言うところの「もっと時代に合わせた工夫をするべき」というのは
一般論としてならわからないではありませんが、
(というか、電光掲示板で字幕が出れば十分じゃないのかと…能楽でそんなのまず出ませんよ)
こと文楽に関しては、演出上新しいことをやるよりは、今あるものを形を変えずに維持していくことが重要です。
でなければ、伝統芸能としての存在意義がなくなっていまい、今残っているものも失われてしまうからです。
この手の無形の芸能は、人による継承が断たれてしまうと、二度と復活させることはできなくなってしまいます。
そのあたりのところを、橋下市長には今少し考えていただきたいものですが…。

それはそうと、こういう声がもっと地元から上がってこないのはさすがにどうかと思うので、
個人的に今後はもう少し応援してみようかと思います。
まずはまた自分で公演を見に行くところからだなー。