文化芸術振興基本法を知っていますか?

先日の毎日新聞の地域欄に、
去年から京都市交響楽団の音楽主幹をされている新井浄さんのインタビューが載ってたんです。
新井さんは群馬交響楽団の事業局長などをされていて、
スカウトされて去年から京響の音楽主幹になった、という方だそうです。
京響は今年から京都市の直轄事業から京都市音楽芸術文化振興財団という外郭団体に移管されたのですが、
そのへんの絡みの話が載っていて、それ自体もかなり面白かったんです。
今まではコンサートで収益を上げても、収益は楽団ではなく市に入っていて…とか。

んで、その中で「文化芸術振興基本法」という話題が出ていたのですが、
そんなものを知らなかったので、んん?と思ったわけです。
全文は文化芸術振興基本法(書の広場)でお読みいただくとして、
「そうだったのか!」と思った内容は、
文化芸術振興基本法(平成13年12月7日公布・施行)
第一条 この法律は、文化芸術が人間に多くの恵沢をもたらすものであることにかんがみ、文化芸術の振興に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、文化芸術の振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、文化芸術に関する活動(以下「文化芸術活動」という。)を行う者(文化芸術活動を行う団体を含む。以下同じ。)の自主的な活動の促進を旨として、文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図り、もって心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与することを目的とする。

第三条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、文化芸術の振興に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、文化芸術の振興に関し、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。 
おおおお、文化芸術の振興を自主的かつ主体的に実施するのは、地方公共団体の責務なんですよ!
聞いてます?橋下知事
第二十六条 国は、美術館、博物館、図書館等の充実を図るため、これらの施設に関し、自らの設置等に係る施設の整備、展示等への支援、芸術家等の配置等への支援、文化芸術に関する作品等の記録及び保存への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。 

第三十五条 地方公共団体は、第八条から前条までの国の施策を勘案し、その地域の特性に応じた文化芸術の振興のために必要な施策の推進を図るよう努めるものとする。 
ねえ、聞いてます?橋下知事

てゆーか、この「文化芸術振興基本法」をタテにとって、
いわゆる「橋下改革」に対する異を唱えた人っていたんですかね?
(ここで「橋下改革」と言っているのはたとえばの話であって、
 他の同種の動向一般に対して言えることではあるのですが)

そもそも、この文化芸術振興基本法って、世間的に浸透してるもんなんでしょうか?
あるいは、文化芸術を事とする専門家の間に。
恥ずかしながら、不勉強なことに僕は全然知りませんでした。
ひょっとして、一般常識だったりしたらむっちゃ恥かしいな…。

もちろんこの法律はあくまで「基本法」なのでありまして、
具体的な内容は書かれていない、言うなれば「お題目」です。
ですが、お題目にはお題目としての価値があります。
これによって、「あなた方の私見私見として、それは明確に法の理念に反するのだ」と
堂々と主張することが出来るはずだからです。
要するに、お題目を活かすも殺すも使い手次第。
これって、憲法にしても教育基本法にしても労働三法にしても言えることだと思うんですが。

研究者と政治活動との関係については難しいものがありますが、
少なくとも法の制定と運用に関しては、もう少し積極的でなくてはならないのかなあと
思わされることの多い昨今です。