「専門書の値段」。

1 自費出版的方法で出版した研究書の価格と、書店刊行の研究書の価格を単純比較して
「価格破壊」と言うのは間違いであると考えること。(※1)
2 書店刊行の研究書の価格に「価格破壊」という考え方を持ち込むと、
結果的に書店に対する過度の価格下落圧力になり、
  ひいては研究者自身が将来的に困りかねないと考えること。(※2)
 
私が先日「専門書の値段」という記事で私見として述べた内容は、以上二点に尽きます。
何度も書きましたが、「自費出版的方法で出版した研究書の内容」については論じていませんし、
自費出版的方法で専門書を出版する行為」についても承認しています。

真意が伝わらないのは私としても不本意ですし、追記も長くなりましたので、
今後は主張をより明確化したこの記事で換えさせていただきます。
 
もとより「対象を一般化した議論」として書いていますが、
上記の内容・表現で問題があるとお考えの方は、コメント等でよろしくご意見下さい。
元の記事は閲覧できないようにしますが、コメントを下さったみなさま、ありがとうございました。
 
(追記)
この記事も前の記事も、
「日本史史料研究会」という特定の団体の活動に対する批判ではありませんし、
下記コメント欄でも度々述べた通り、
「日本史史料研究会」がこの記事で言うような「価格破壊」を目的に活動されている事実はありません。
「特定の団体への批判」と受け取られる方が多かったことは事実で、この点責任を感じております。
「日本史史料研究会」のみなさまにご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。 
 
(以下、注記です)
※1
出版に関わる編集・印刷・流通・管理の作業やコストを、
書店刊行の専門書では書店が担い価格に乗せており、
自費出版では出版者自らが負担しています。
両者の価格の差はあくまで「コストの負担先の違い」であり
「一つの本を出すのにかかるコスト」全体の差異ではありません。
 
※2
私は「現状で専門書の価格が不当に高いのではない」
「現在の出版社の経営状況はぎりぎりだし、それ以上のコストカットを求めるのは酷だ」
と現状認識しています。
そうした中で消費者が価格下落圧力を過度にかけることは、
出版コストを必要以上に引き下げる方向に作用しかねず、
書店のさらなる経営の悪化や、待遇の悪化による編集者・印刷者の質の低下につながる恐れがあります。
研究者にとって、書店は出版に伴う労力と金銭上の諸々のリスクを
研究者に代わって引き受けてくれている存在であり、
書店出版の専門書には「プロの仕事」として敬意と正当な対価を支払うのが、
結局のところ研究者自身のためになるのではないかと考えます。
 
※補注
「書店」は本来は「出版社」とすべきところですが、
「出版社」と「出版者」では紛らわしいので、便宜上「書店」としています。