眠りの魔術。

明日は某女子大のゼミの卒論準備報告会です。
今年は卒業年度の人が5人と多いのですが、一人は頑ななまでに「イヤです!」とのたまい
(そんなにイヤかなあ)、一人はとんと音沙汰がないので、計3人の報告と相成りました(苦笑)。

テーマはそれぞれ、
摂関家の別業と宇治
江戸歌舞伎と曾我物語(タイトルは「カブク曾我」らしいです。シャレてますね。)
狛犬の原像と由来

…宇治はともかく、歌舞伎と狛犬は全くの専門外ですよ。
だからこそ楽しい、とも言えます。
今日は大学で論文を漁ってきて、付け焼刃でお勉強。
(ここで言い訳する必要もないけれど、参考文献が明らかになったのが今週の半ばだったのです。)

狛犬は専門外なんですが、実はこれまでに縁はあります。
1回生の時に、一般教養の日本史で取ったのが、まさに狛犬がテーマの授業だったのです。
で、参考文献のトップに上がっていた論文は、まさにそのS先生の御論文。

S先生の授業は多分登録者は50人近くいたんだろうと思うのですが、
常時出席していたのは大体8人(しかも固定メンバー)という状況でした。
大体において、うちの大学の先生方(S先生は非常勤の先生でしたが)は出席を取らないので、
(だってめんどくさいし、出席しようがしまいが内容さえちゃんと答えられればそれでいいわけだし)
登録者数と出席者数は乖離するものですが、
それにしたって、しかも日本史という比較的メジャーなジャンルで、
この出席状況と言うのはやはりかなり破格。
おまけに、単位認定は前後期ともにレポート10枚とうちの大学ではこれまた破格に厳しい。

そんな状況でたった8人固定で出てるメンバーですから、
みんな内容に興味があって、かつそれなりに真面目な面子なのです。
そして、実際内容は面白いし、先生の語り口も面白い。

なのになのに、しかーし。
みんな寝る寝る(苦笑)。見事なまでに寝ます。
私は友人と教卓の斜め前の席で授業に出ていたのですが、ふと見回すと沈没者続出…。
しかも、みんな一斉に寝るのではなくて、どういうわけか順繰りに頭の浮き沈みが循環していきます。
そしてそんなことにはお構いなしに、教卓でにこやかに楽しそうに語り続けるS先生(笑)。
友人と二人で、「あれは絶対何か先生の言葉に眠りの魔力があるのだ」という結論に。

と、そんな懐旧の念に浸りながら(もう12年前の出来事ですから)、
S先生の御論文を読んでみたわけですが…。
あー、なんか眠りの魔力の源泉がわかった気が。
なんちゅうか、先生の語り口同様、とうとうと流れるような文章なんですね。
大体書き出しからして、
「現在の民間神事に登場する獅子舞が遠く伎楽に淵源を持つらしいことに関心を持ち、
 多少調べていくうちに角の生えた不思議な師子頭に行き当たった。」
って、あんまし普通の論文ではお目にかからない文体です。
このアップダウンの少ないまったり感が、トランス状態へのいざないだったに違いないと
みょうに合点がいきました。
正直、僕には真似できないです(笑)。

あーっと、最後に誤解のないように明記しておきますが、
S先生の講義は非常に好きでしたし、内容もほんとに面白かったんですよ。
(でなけりゃ最後まで出席したりしません)
できればそういう行間に漂う「愛情」を汲み取っていただきたく。