田村由美『BASARA』。

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リフォームの都合で本を減らさなくちゃいけなくなった後輩さんから、
田村由美『BASARA』全27巻を譲ってもらいました。
完結したのが98年ですから、8年前の作品てことになりますか。

たまには柄にもなく、読んだことのない人向けに解説を付けてみましょう。

舞台は、高度な文明が20世紀末に滅びてしまった未来の日本。
国民は暴君の圧政に苦しみ続け、そして300年の時が過ぎた時、双子の兄妹が生まれた。
兄の名はタタラ、妹の名は更紗。
タタラは暴君の圧政から人民を救う“運命の子”と予言され、人々の希望の星となる。
しかし、赤の王(国王の息子)の襲撃によってタタラは殺され、
妹の更紗は「タタラ」として生きることを選び、赤の王への復讐を目指して立ち上がる…。

というのが、一応のイントロ。
「赤の王」朱理にも、彼なりの目的、彼なりの行動原理があるわけですが、まあそれはさておき。

感想は、すこぶる面白かったです!
舞台設定やストーリー展開を論じれば、組み合わせはともかく(まあそれが大事なんだけど)、
それぞれがそれほど目新しいわけではありません。
「高度な文明が滅びた後の世界」はSF系の定番ネタだし(『北斗の拳』でも何でもいいけど)、
女の子が「男の子」として生きるというのも定番(マンガだと最初は『リボンの騎士』?)、
敵対する両陣営の男女が、互いの正体を知らずに魅かれ合う、というのもよくある設定。
(って書いたけど、パッと取り合わせが思いつかんぞ…
 両方が正体を知ってる/片方が正体を知ってるとか、バリエーションも色々ありますね)
「よく語られる話」というのはつまり、そこに人が何がしかの魅力を感じるということなわけで。
結局それが傑作になるのか駄作になるのかは、そこに描かれるキャラクターがいかに生き生きとしているか、
そして、彼らの心理描写がいかに読者の共感を呼ぶものか、という点にかかっているといえるでしょう。
この作品を面白いと感じたのは、まさにその点がとてもよく出来ていたからです。

まず、敵味方あわせて相当多くのキャラクターが登場しますが、それぞれキャラがしっかり立っていて、
誰も彼もみんなちゃんと存在感があるし、そこに生を感じます。
(活動的かどうかに関係なく、それは例えば「白の大姉」銀子さんであっても。
 それこそ鬱金王であっても、それは負の方向性を強烈に意識させる生なわけで)

そして、時間の流れが存在する作品なので、主人公以下若い伸びしろのある登場人物は
みんなちゃんと納得の行く形で成長していき、読んでてその過程にとても感情移入できます。
(たまにゃ成長のないキャラとかダメになってくキャラがあってもいいと思うんですけど、
 そういうキャラを主要登場人物に入れちゃうと結末付けるのがきっと大変なんでしょうね)
特に、主人公二人の恋愛物として見た場合に、二人がお互いに影響しあって変わっていく過程(特に朱理かな)、
お互いの関係が変わっていく過程が、とっても読んでて気持ちいいんですよね。
ああ、こういうステキな相手が欲しいよねー、って(笑)。
(まあ別に「男女」であることにこだわる必要なんてさらさらないわけですけど)

でもって、ストーリーの開始時点ですでに完成しているキャラというのが一方であるわけですが、
(揚羽、柊、その他諸々の、実年齢とは関係なく大人としての役回りを与えられる人々)
そういったキャラクターに深みや奥行きがある。
本編以外に結構たくさん番外編が入っていますが、そういう形でなくても、
要するに読み手が、「このキャラがこういう性格になったのにはどういう過去があるんだろう?」と
想像をふくらませるきっかけと余地がたくさんある、ということです。
多分それは、例えば同人誌という形で具体化するんでしょうけど、
『BASARA』って同人ネタとしては流行ったんですかね??その辺はよく知りませんが。

あれこれ書いてきましたけど、個人的には菊音ちゃんがいいですね~。
こういうパキパキっとした気風のいい女の人というのはステキです。
あ、あと、舞台設定に見事にマッチしたキャラクターのネーミングはお見事。

あと、これはどうでもいい話。
全27冊を一度には運べないので、二度に分けて受け取ったのですが、
14巻まで受け取ったのがGW。で、続きを受け取ったのはこないだの土曜日。
読んだことがある人はお分かりだと思うのですが、
更紗と朱理が初めて結ばれるのは15巻の冒頭です。
ということはですねー。
「これからどうなるんだろ、ドキドキ♪」っていう肝心なところで2ヶ月以上おあずけだったわけです。
生殺し~~~(笑)。