ゆうきまさみ『白暮のクロニクル』

単身赴任になった当初、生活のあまりの潤いのなさに音を上げて、
「何か手ごろな趣味の場はないものか」と探しておりましたところ、出会ったのが「Norwegian Wood」というBar。
このお店、コンセプトの一つが「読書」で、読書会とかのイベントがあるんです。
開催日がだいたい火曜日で、週末は京都に帰る身にはなお良し。
仕事のピークが水曜日なので、そこは大変なのですが、まあそれをモチベーションに頑張れる面もあるわけで。

というわけで、参加した「本をオススメするイベント」で出会ったのが、ゆうきまさみ白暮のクロニクル』です。
ジャンルとしては、「吸血鬼もの」になります。
「オキナガ」というのが作品世界での吸血鬼(的存在)なのですが、
非常に面白いのが、オキナガは一応社会的に存在が認められており、
行政にもちゃんと担当のセクションがある(厚労省)、という点です。
ヒロインも、担当セクションの職員(たぶん技官)。

もともと、吸血鬼ものに限らず、
ミュータントというものは文学的には異分子であり排除されるべき存在として描かれてきた
(ミュータントが正義のヒーローであれ悪役であれ)わけで、
その点は、「ミュータントが多数派となった世界」をテーマにした作品であっても、
少数派となった人間が異分子として排除されるという点では同様です。
ところが、未見ですが、ゾンビを扱う役所の職員を主人公にしたテレビドラマがあったように、
「ミュータントがミュータントのままで社会の中に位置づけられる」という描かれ方をするのは、
様々なマイノリティが社会の中に位置づけられてきた状況の反映なのかなあと思います。

ゆうきまさみ作品は『機動警察パトレイバー』しか読んでいないんですが、面白いのは、ヒロインの姓「伏木」が、
機動警察パトレイバー』のキャラにも使われていることです(ヒロインが好きなミュージシャンの名前)。
偶然とも思えないので、何か意図があるんでしょうが。
あと、『週刊パトス』が両作品に登場するのが良かったです。
いいタイトルですよね。ぜひ記事が読んでみたい(笑)。

作品の評価としては、佳作だとは思うのですが、
ストーリー全体の軸になってる事件の真犯人の提示の仕方がちょっとなーと思うところはありますかね。
キャラクターの中では、ヒロインの上司のノンキャリとおぼしき係長がイイ!というのが、
夫婦共通の感想でした(連れも一気読み)。
いろいろな意味で「公務員の鑑」というべきキャラで好きです。

自分の好みが確立してくると、なかなか新しい作品や作家に触れることがないので、
こういう機会はとても貴重です。また参加したいですね。