びわ湖オペラビエンナーレ『ミニヨン』。

7月22日(土) びわ湖ホール
びわ湖の夏 オペラ ビエンナーレ『ミニヨン』
A.トーマ作曲 全3幕《日本語上演》
原作:ゲーテ「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」
訳詞:宮本益光(「君よ知るや南の国」訳詞:堀内敬三
監修:若杉弘びわ湖ホール芸術監督)
指揮:大島義彰
演出:岩田達宗
管弦楽大阪センチュリー交響楽団

ミニヨン:渡辺玲美 フィリーヌ:黒田恵美
ヴィルヘルム:大澤一彰 ロタリオ:服部英生
ラエルト:竹内直紀 フレデリク:丸山奈津美
ジャルノ:石原祐介 アントニオ:中西金也
合唱:びわ湖の夏・オペラ ビエンナーレ合唱団、ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団

●あらすじ●
 19世紀のドイツのある田舎町の宿屋。さすらう若者ヴィルヘルム・マイスターが彼の人生を大きく変える人々と出会う。
かつて娘をさらわれ正気を失った老吟遊詩人ロタリオ、花形女優フィリーヌ、そして貧しい大道芸の旅一座の踊り子ミニヨン。
旅一座の中で、虐げられていたミニヨンをヴィルヘルムが救い出したことから彼らの運命は大きく動き始める。魅力的な女優フィリーヌに夢中なヴィルヘルムと自分を救ってくれたヴィルヘルムに切ない慕情を寄せるミニヨン。そんな中で彼らを取り巻く謎は深まってゆく。
 ただ一つオレンジの花が咲く南の国だけは覚えていると語るミニヨンの素性とは?老詩人ロタリオの正体は?男爵の城で開かれたフィリーヌ主演の「真夏の夜の夢」の公演の夜、公演が大成功のうちに終了した時、劇場は謎の火事に包まれる。
炎に巻き込まれたミニヨンの運命は?炎の向こうに隠されたある秘密が明らかにされるときが近付いていく。
 「君よ知るや南の国」「私はティタニア」など数々の珠玉の名アリアで知られる傑作オペラが50年あまりの年月を経て、日本の聴衆の前に、此処びわ湖ホールで蘇る!


というわけで、久々にオペラを見てきました。
「オペラ ビエンナーレ」はびわ湖ホールの主催事業で、2年に一度オペラの公演を行っています。
キャスティングは完全オーディションなのですが、これがめちゃめちゃレベルが高い。
今回はソリストにうちの合唱団の元ボイストレーナーの先生、
合唱に合唱団の友人が、見事オーディションを通ってご出演です。ビバビバ。
んでもって、完全にこの公演だけに組織されているので、関係者の熱の入れようがハンパじゃありません。
今回も素晴らしい出来の舞台でした。

オペラの花といえばなんといってもアリアなわけです。
で、今回ソリストのみなさまはみんな素晴らしかったのですが、
特にすごかったのはタイトルロールを歌われた渡辺さん。
もうほんとホール全体に響き渡る美声でした。
ああいうのを聞くと、人間の体ってすごいよなーっていうことと、
クラシックの発声法ってすごいよなーって思います。
だって、機械による電気的な増幅が全くないのに、オケ背負ってあんだけ生声を響かせちゃうんですもんね。

黒田先生は「主役のライバルの女優」の役だったんですが、
奔放で魅力的な役どころに、声質がぴったりはまってとってもステキでした。
実際、主役のミニョンよりはフィリーヌの方がよっぽど魅力的なのですが。

ストーリーは「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」の外伝的位置付け。
…なんですが、つっこみどころ満載(笑)。まあ結構、オペラの筋ってそんなもんですけど。
例えば、主人公のヴィルヘルムは「昨日大学を逃げ出してきた」とか言うんですけど、
旅の一座で奴隷同然に虐げられていたミニョンを即金で身請けして自由にしてやり、
挙句イタリアの館にたどり着いた時には「明日にはこの館を買おう!」と言い出す始末。
あんたどんな金持ちやねん。
そのくせミニョンに対して、「召使がいるなんて分不相応だから」とか言って追い出そうとするし。
おまけに、途中まではフィリーヌにほれ込んでて、ミニョンには見向きもしないくせに、
ミニョンがフィリーヌに嫉妬していたとわかった途端に、ミニョンに心変わり。
女性陣からはいたく評判の悪いキャラクターでした。
大体において、オペラの主役の男は「女の敵」タイプだ、という結論に落ち着いていましたが。
(そして、大体において、バレエの主役の王子様はおバカだと相場が決まっている 笑)
でも、訳も演出も意欲的かつ斬新で、楽しめました。

合唱で出演の友人も、とても頑張っていました。
合唱自体はわりと少ないんですけど、その分演技が多くて、
友人はかなーり目立つところに頻出。
よく知ってる人がああいうところで頑張ってるのを見るのはちょっと不思議な気分です。

オケは正直かなりヘチョかったです(苦笑)。
最初は「久々の生オケはいいな~」と思ってたんですが、
とくに金管の出来(あれはホルンかな?)に「????」状態に。
そんなわけで、採点基準がだいぶ甘めだった私でもちょっとむむうな感じだったのですが、
友人たちに言わせれば、弦もたいがいヘチョかったそうで。
オペラのオケは、主役ではないとはいえ、添え物では全くないですからねえ。
さすがにそれはまずいでしょう…。

最後のカーテンコールで、佐藤功太郎さんの遺影が掲げられた時には胸が詰まってしまいました。
佐藤功太郎さんは2年前のこの企画でも指揮をされていて、今回も本来指揮されるはずだったんですが、
6月15日にお亡くなりになられたのです。
そんな事情も聞いていたので、ちょっとやっぱり…。

客席にもかなり音楽関係者がいらっしゃいました。
今回の監修である若杉弘さん(びわ湖ホール芸術監督)はもちろんのこと、
びわ湖の次期芸監である沼ぴょんこと沼尻竜典さん(ってゆうか、勝手にそう呼んでるだけですが。
うちの合唱団の演奏会も一度振っていただきました)もご来場。
若杉さんはどういうわけかスーツがものすごいヨレ具合で、
一瞬「オレの見間違いか?」とか思ってしまいました。あれは一体なんだったんだろう。

自分があんな風に歌えるなんてこれっぽっちも思ってませんが、
こうやっていい演奏を聴くと、やっぱり素晴らしいくていいなあと思って、
自分でも自分なりのレベルで、また歌いたいなあと思います。
そんな生活の余裕が出来たらいいなあ、なんて思いつつ。