4回転をコンスタントに跳べた男たち。

「4回転ジャンプを複数シーズンに渡ってコンスタントにクリーンに成功させることができた選手」
と言われたら、フィギュアスケートファンのみなさんは何人くらいの名前を挙げられますか?
正直なところ、僕はこの条件に該当するのは
  ストイコ  ヤグディン  プルシェンコ  ゲーブル  李成江  ジュベール  高橋大輔
くらいのもんじゃないかと思うんですが。

今回のオリンピックでプルシェンコはライサチェックに負けましたが、
だからといって「プルシェンコはライサチェック以下の選手だった」と言う人はいないでしょう。
単純に、ある同一時点での一つの競技会での結果、ですよね。
それは採点方式のせいという要因もまあないとは言いませんけど、
本音を言えば、単に「プルシェンコがそれだけ年齢的に衰えた」というだけの話だと思っています。

もっとぶっちゃけて言えば、
「全盛期のプルシェンコヤグディンなら、どんな採点システムだろうが必ず勝つ」
と思っています。
彼らと同等以上の才能が同時代に存在しなければ。ソルトレイク五輪のように。

長野五輪からトリノ五輪にかけて、より多くの選手が4回転にチャレンジしてきたのはなぜかと言えば、
平たく言えば「4回転を跳ばなくては相手に勝てなかったから」です。
「採点方式的に勝てなかった」というよりは、相手に勝てなかった。
長野の前にはストイコ、長野の後からはヤグディンにさらにプルシェンコが加わって、
ソルトレイクからトリノの間はプルシェンコ全盛。
特にソルトレイク五輪前後は、4回転がないと優勝はおろか表彰台もおぼつかないという状態でしたし。
(それも、世界選手権どころかヨーロッパ選手権でも)

なんとなく、そういう状態が当然のように思ってきたわけですが、
実はそれって「今までがすごすぎた」ということなんじゃないのかなーと。

さて、2008年にバトル、2009年にライサチェックが世界選手権で勝ち、
4回転を跳ばずに優勝という結果が2年続きました。
別にそれは今の採点方式のせいではなくて、プルシェンコとランビエルが引退し、
この2年間はジュベールや高橋くんが不調だったから、でしょう。
現行の採点フォーマットだって、4回転をコンスタントに跳べるのならいちばん有利なんですし。
今回だって、プルがトリノの時と同じ質の演技を再現できれば文句なく勝てたわけですし。
(4回転の基礎点が上がってる分、前回並みかそれ以上に楽勝だったはず。
 本音を言えば、そうやって勝ってほしかったと思ってますよ。)

「今の採点方式が4回転を跳ばずに優勝できるシステムだ」というのは
可能性としては導入当初からわかっていたことで(正直、「何を今さら」という気がしてます)、
それが顕在化しなかったのは、4回転をコンスタントに決められる選手が継続的にいたからです。
逆に言えば、4回転をコンスタントに決められ、他の要素もしっかりできる選手が再び登場すれば、
みんなまた4回転に挑戦してくるでしょう。順位が相対的に付く競技なのですから。
単純に「特に若手がなかなか4回転に挑戦しなくなる」というだけの話なんだったら、
4回転の基礎点をもうちょっと上げるだけの手直しで済むことだと思うんですけどねー。

言い足りないことがある気はしますが、とりあえずこれにて。