『ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~』。

3週間ほど前に、本屋で平積みになっていたのを見かけて衝動買いしたのですが、
なんだか「このマンガがすごい!2012」の男編第1位に選ばれたそうで。
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…買っといて、レビューも今から書くのにこういう言い方をするのも何ですが、そこまでの作品かなあ(苦笑)。
面白かったのは間違いありませんが、
どっちかというと、選者の「昭和ノスタルジー」を刺激したんじゃなかろうかという気がします。
1977年生まれの僕はいろいろなものの「しっぽ」の世代なので(昭和・団塊ジュニア・管理教育etc.)、
その意識はある程度わかるのですが。

この作品は、『ブラック・ジャック創作秘話』と銘打っていながらも、
結局のところ人間・手塚治虫を描こうとしていて、「神様ではないけれどやっぱりスゴイ!」と述べています。
えらく矛盾した物言いだと思いますが(結局神格化しとるがな 笑)、まあでもやっぱりすごいんだろうなあ。

面白いのは、結果的に浮き彫りになっていたのが、手塚治虫の漫画家としての凄さ以上に、
監督としての凄さというか、人に何かをさせてしまう凄さだった、ということですね。
アシスタントさんや編集者さんを巻き込んで、多大な労力をつぎ込ませ、良い作品を生み出していく。
それを差し出すほうは「しんどいなあ」と思うわけですが、でもそれを許容してしまう。
もちろん、「孤高の天才」という人も存在しますが、一人の力では不可能な仕事を残す人というのは、
そういう魅力とか愛嬌とかいった美質を持ち合わせているのが常で、手塚治虫もそうだったんだなあ、と。
こういう人に出会ってしまったら、きっともう逃れられないんでしょうねー。

個人的には、寺沢武一のアシスタント時代のエピソードが読めたので、それだけでももう満足でした。