文化的トリアージ。

yahoo!のトピックスで上がっていて知った問題です。
「県立図書館の閲覧・貸し出し廃止、川崎は廃館」と県教委方針/神奈川(カナロコ)
 県内屈指の専門書を有する県立図書館2館について、県教育委員会は7日、横浜市内の1館に図書所蔵機能を集約し、閲覧・貸し出しサービスは廃止する方向で検討していることを明らかにした。川崎図書館は廃館となる見通し。県緊急財政対策に基づく施設見直し計画の一環で、今後は市町村立図書館の機能を補完する事業に特化させる方針だ。都道府県立図書館を県民が直接利用できなくなるケースは例がないという。
県教委は、県立図書館の役割として▽図書の相互貸借システムの運営▽司書の研修▽専門書の収集-などを列挙。県内の公立図書館は、全33市町村で40年ほど前の約4倍に当たる75館が整備されていることから、「閲覧や貸し出し業務は県民に身近な市町村が担うべき」との考えを示した。
県立図書館2館の蔵書計約104万冊は、公立図書館など112機関が加入する「県図書館情報ネットワークシステム」(KLネット)を大学や企業に拡充し、各館で共有する仕組みを構築。いずれの施設でも専門書を閲覧可能とすることで、2館で年間約43万人の「利用者の利便性はさらに向上する」としている。
川崎図書館は、敷地(市有地)の借用期限が2017年度末となっている上、建物が老朽化しており、市の再編整備計画に合わせて取り壊される見通しだ。
これらの見直しで県教委は、2館の年間総事業費約12億400万円(11年度決算ベース)のうち約7割を削減できると試算。ただ、実現には市町村側の理解と協力が欠かせないため、各自治体担当者を含めた検討組織を立ち上げ13年度中に検討、14年度以降に方針を決定したいとしている。
県教委の二見研一教育局長は「公の施設という観点からは廃止に該当する。市町村と連携した新たな図書館の形態をつくっていくため、議論を尽くしてロードマップを示していきたい」と述べ、県民意見を募る考えも示した。7日の県議会決算特別委員会で、松崎淳氏(民主)の質問に答えた。

◆県立図書館
県立図書館(横浜市西区紅葉ケ丘)は、隣接する県立音楽堂とともに当時数少ない文化施設として1954年に開館。社会・人文系や神奈川に関する資料など高度な学習ニーズに対応してきた。蔵書数は約80万冊で、横浜市立中央図書館に次ぐ県内第2の規模。県立川崎図書館(川崎市川崎区富士見)は京浜工業地帯の発展を背景に58年に開館。自然科学・工学・産業技術系に重点を置き、国内外の工業規格や会社史のほか「県知的所有権センター県立川崎図書館支部」として特許情報も提供している。
このニュースを読んで、最初に思い浮かべたのは、滋賀県立図書館の事例でした。
滋賀県立図書館も、数年前に経費削減が問題になって、休館日を月・火曜の週2日に増やしたんですよね。
滋賀県在住の研究者の方が「県立図書館が週に2日も閉まってるなんて恥だ!」と憤っていました。

もちろん、公共サービスの低下それ自体もけしからんことですし、
文化に関わる経費が真っ先に節減されるのも問題です。
ただ、そうは言っても地方自治体にお金がないこともれっきとした現実であり、
その中で、文化に関わる経費だけを削るなというのも、やはり無理なことかなあとも思います。
ことに、滋賀県の場合は琵琶湖文化館が結局休館にされてしまったという前例があるわけで、
その中で「休館日を増やす」というのが現実的な対策であるのなら、
致し方のないことなのかなあと思う部分もあるのです。

つまり、現状の発展がベスト、維持がベターなのは当然のこととして、現状維持が不可能な状況の中で、
それぞれの機能の何を残すのかというギリギリの選択を迫られているのが
今の状況なのかもしれない、ということです。
そういう、言ってみれば「展望なき撤退戦」を強いられていく中で、
特に文系の諸学問は、今後さらに厳しい局面にさらされるでしょう。
その中で、何を守りどう折り合いをつけていくのかという点について議論し、
全体としてある程度のコンセンサスを形作っていく必要があるのだろうかと思いました。

ちなみに、川崎図書館が休館の方針となった理由の一つに建物の老朽化が挙げられていますが、
琵琶湖文化館の時も、老朽化の問題が挙げられていました。
川崎県立図書館が1958年開館、琵琶湖文化館が1961年開館ですから、
いずれも高度成長期前後の開館ですね。
笹子トンネルの崩落事故をきっかけに、高度成長期に整備されたインフラの老朽化が問題になっていますが、
これが文化行政にも波及してきているということですね。
博物館等の整備の一つのピークは1968年(=明治百年の記念事業)なわけで、
そう考えると、数年先にはこうした問題が各地で頻発する可能性があるように思います。
ほんと、今のうちにきちっと考えておかないと…。