風疹と聴覚障害。

最近は首都圏などで風疹が大流行しているそうで。
「風疹の予防接種の対象が誰だったか?」というのは、実はジェネレーションギャップがある問いなんですね。
僕らの世代は、「風疹に罹っていない中学生の女子」でした。
1995年からは男女を問わず幼児に予防接種を受けることになっています。
風疹のリスクなど、詳しいことは国立感染症研究所のHPでどうぞ。

さてそれで、風疹を巡る世代間ギャップについてですが、実は僕の世代(団塊ジュニア)では、
「妊娠中の風疹の危険性」について、学校教育などとは別に知識を得る機会があった人が結構いるはずです。
というのは、この作品がかなり話題になったから。
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山本おさむ『遥かなる甲子園』です。
詳細はウィキペディアなんかでも詳しく説明されています。
かいつまんで説明すると、舞台となっているのは沖縄の聾学校で、
聴覚障害を持つ野球好きの生徒たちが野球部を作るのですが、
当時の規定ではろう学校の高野連加盟が認められなかったため、高校野球の大会には参加できませんでした。
(現在はこの規定は改定されています)
それでもあきらめない彼らに対し、高野連の会長は特例で県大会参加を認めるが…というお話です。

で、この舞台となった沖縄のろう学校ができた経緯というのが、
アメリカによる占領下の沖縄で、アメリカ本土で大流行した風疹が飛び火し、
妊娠中の母親が風疹にかかったことによる多くの聴覚障害児が出生したためなんですね。
メインストーリーはもちろん野球の話なんですが、
生活レベルの労苦をこれでもかというくらい描き込む山本作品を読んだことがある人ならおわかりのように、
本作では障害者の直面する苦しみや差別が、読んでいて痛すぎるほどに描かれています。

原作の小説はノンフィクションなのですが、本作はあくまでもフィクションであり、
そこには当然、創作も誇張もあるはずです。
ですが、だからこそ読み手に生々しく伝わるのであり、そこにこそこの作品の真価があるのだと思います。
こうした障害や差別を正面から扱った作品は、最近では少なくなりました。
それは一つには、こうした社会問題が目に見える形では社会から減ってきたことも一因だとは思いますが、
それと表裏一体の関係で、こうした題材そのものに対する社会の忌避感が増している面もあるでしょう。
風疹が流行している現在だからこそ、改めて光を当てる価値がある作品かと思い、紹介してみました。
興味を持たれた方は是非ご一読ください。