岩明均『ヒストリエ』10。

たびたび発売延期になっていた岩明均『ヒストリエ』10巻ですが、ついに出ました!
内容はすごく良かったです。待った甲斐がありました。反論はあるかもしれませんが。
カイロネイアの戦いの描写は、まあこんなもんかなあと。
個人的に非常にツボだったのは、エウメネスとエウリュディケとの別れです。
いいと言うと語弊があるかもしれませんが、切ない感じが非常にいいです。特に最後がたまらない。
あと、お互いがお互いの自己本位な面を認めているところが、大人な感じが出ていて非常にいいです。
気になる人は、本編を読んでみてください。

もう少し分析的に言えば、エウメネスはサテュラに続いて、エウリュディケとも意に染まぬ別れということになる
のですが、サテュラとの別れの際には、エウメネスは「パリスとヘレネにはなれない」と達観していて、
自分から身を引いているのに対し、エウリュディケとの別れの時には、あえてパリスになろうとしています。
この違いは、結婚にかかっている政治的要因の違いというのもあるんでしょうが、やはり、
エウメネス自身の心の持ちようの違いや、相手に対する想いの違いによるものなのだろうなあと思います。
そして、それが、この先の物語の展開の中で、大きな作用を及ぼすのだろう、と。
ここまで書いていて気づきましたが、「ハルパゴスのメディア王国に対する忠誠心」と、
エウメネスマケドニア王国に対する忠誠心」とが、相似の関係になったりするんですかね。
まあ、これは将来正解だった時に詳しく書くことにしましょう(笑)。
それにしても、エウメネス本人の憧れはオデュッセウスなのに、
役回り的にはパリス的立場になってしまう(なり切れないけど)というのも、なかなか皮肉です。

さて、次巻が出るのは何年先のことになるでしょう?