『アルスラーン戦記16 天涯無限』

読了しました。
……うん、悪くないんじゃないかな。
この手の完結まで長期間かかった作品というのは、往々にして「未完のままでよかった」と思うことが
ないわけではありませんが、読み終わってそういう気分にはなりませんでした。
結末は、予想通りの部分もあり、そうではない部分もあり、という感じです。
一応ネタバレしないように書いていますが、気になる人は読まないでください。

基本的には『マヴァール年代記』的な結末になるんだろうなあと思っていて、
実際そうなったと言えなくもありませんが、読み進めるうちに思い浮かべたのは、
山田風太郎の『外道忍法帖』です。
正確に言えば、『外道忍法帖』の解説です。
誰が書いていたか、正確にはどんな表現だったかは忘れましたが、
「面白い作品なのだけれど、惜しむらくは、十五童女・天草党・張孔堂組の三者が相打ちで
一人ずつ消えていく点に、予定調和的な趣がないではない」と。
で、結末としては、キリシタンの秘宝は海の底に眠り続けることになる。

そこでさらに連想したのが、昔、祖父に吉川英治の『神州天馬侠』を借りて読んだときに、
祖父が言っていた一言です。
「こういうのは、財宝が見つかったら歴史が変わってまうから、最後はみんな死んでしもて、
財宝はどうなったかわかりません、っちゅう風になっとるんや」と。
そう、ある種のストーリーにおいて、全滅エンドというのは不可避なのです。
(厳密に言えば全滅ではありませんが)
身もふたもない言い方をすれば、「だからこそ死なせ方が大事」で、そこで評価が決まるのかもしれません(笑)。
この点について最終巻に限って言えば、「おいおい」と思うところもなかったわけではありませんが、
おおむね納得がいく内容でした。

それにしても、30年がかりでの完結ですか。
全16巻なので、「2年に1巻ペース」と思えば、それなりなんですけど…ねえ(笑)。
「本当に完結したんだ」という感じです。