歴史学研究者のなすべきこと。

 まず、一個人として、呉座さんご本人に対しては、「自身の言動について『偏見』に基づくものと認めているのだから、今後はそれを改め、そのことを行動で示してほしい」と心から願っています。

 私は現在どの学会の運営にも直接には関わっていないので、以下は複数の学会の一会員としての立場からの私見です。
 一般論として、組織の構成員に関わる問題については、組織内のルールに従って、権限者・機関が内容を精査し、何らかの対応がなされます。日文研の発表を見る限り、実際、そのように事を運ばれているように見うけられます。
 では、今回の問題に、呉座さんの属する学会が組織として対応できるかというと、本当に残念で恥ずかしいことながら、それは現状では困難なのではないかと思います。なぜなら、ほとんどの学会が、会員の行動規範に関わるルール(規約やガイドラインなど)を定めておらず、問題が起きた時の対応手続きも定めていないためです。その意味でも、今回の件は学界(日本史研究のコミュニティ全体)に内在する構造的な問題であり、学界に関わる人間全員が何らかの責任を負っているのだと思います。
 もちろん、まず今回の件については、必要な対応が個別に具体的になされなければなりません。その上で、今後、同様の問題が起こることを防ぐ、それでも起きてしまった場合、必要な対応が速やかになされるための、各学会としての取り組みが必要になるでしょう。
 まず、規約やガイドラインを定める。それを総会等で承認し、新規の入会者には入会時に同意を求める(総会での承認で代えたいところではありますが、現会員にも、やはり個別に同意を求める必要があるでしょうか)。
 今さらで、これまで多少なりと学会運営に携わったことのある者として本当に恥ずかしいのですが、やはりそこから始める必要があるのでしょう。