『ラプソディ・イン・ブルー』@梅田芸術劇場。

ラプソディ・イン・ブルー』@梅田芸術劇場 2007年6月30日(土)
振付・演出:服部有吉
出演:服部有吉、ラスタ・トーマス、辻本とも彦、大貫真幹、横関雄一郎、TAKAHIRO
ピアノ: 松永貴志
音楽監督・指揮:金聖響
演奏:大阪センチュリー交響楽団
【第一部】
ドビュッシー「月の光」
メンデルスゾーン「イタリア」
バーバー「アダージョ
【第二部】
シェーンベルク浄夜
ガーシュインラプソディ・イン・ブルー

昨年の「Homo Science/ゴーシュ」に引き続き、服部有吉さんの作品を見てきました。
いやー、見てて非常に楽しい公演でした。
ストーリーはあるにはあるんですけど(曲が変わっても、1部2部両方を通して)、
あれこれ難しく考えるよりは、まずは見てて面白い作品。
バックダンサーも含めてダンサーがたくさんいて、舞台の後ろ半分にはオーケストラ&ピアノ、
後方の上にはもう一つフロアがあって、上下2ヶ所で踊ってたり。
ダンサーの動きも多彩で、バレエっぽい振り(回る回る)・ダンスっぽい振り(跳ねる跳ねる)
・ストリート系っぽい振り(くねるしゃがむ)などなど。で、ネタっぽい振りもいっぱい。
見てる方としては「スゲー!」と「なんじゃそらー!」と「なんじゃそら(笑)」の連続でした。
ダンサーが男性ばっかだったということもあって、
「コンドルズの公演を若手ダンサーの超絶技巧で見た」ような印象でした(笑)。

ダンサーについては、個人的にはやっぱラスタ・トーマスが印象に残りましたかねー。
いやー、すごかった。タテにもヨコにもくるくる回る。一回ひねりの前転なんてのが入ったり。
腕のしなやかな動きもすばらしい。
去年の『ムーヴィン・アウト』がすごく良かったのでまた見たかったんですけど、
実現して非常にうれしいです。クラシックの演目でも一度見てみたいなー。

腕のしなやかな動きといえば、指揮の金聖響さんも非常に印象的でした。
とっても「見せる」指揮者なのは間違いないですね。
(演奏者の立場で「打点がわかりやすい指揮者」かどうかはまた別問題ですが…
 というか、指揮者は大家になればなるほど目で指揮してるようにも思うし)
演奏も、今回はとっても良かったと思います。
シェーンベルクの「浄夜」とか、出だしはほとんど振りがなくて、
オケの演奏のみの部分が結構続くんですけど、緊張感のあるいい演奏で、
演奏そのものも、舞台の構成としても、とっても良かったです。

あと音楽に関しては、「イタリア」の特に一楽章が、聞いてて「あ~、メンデルスゾーンだなー」と。
なんちゅうか、この人の音楽っていい意味で「陰を感じない」印象なんですよね、個人的に。
生活に困ったことがない人なんだなって思います(笑)。
あんまし聞いたことがあるわけじゃないですけど、割と好きですね。

で、これは多分少数派の感想じゃないかと思うんですが、
最後の「ラプソディ・イン・ブルー」を見て、「服部さんてちょっとスカしたところがあるのかなー」って。
「スカした」と書くと悪印象みたいに見えるかなー。別に悪い意味ではないんですけど。

どういうことかというと、この選曲で、振りがバリバリのダンス合戦、となれば、
お客さんをノセちゃおうと思えば、簡単にそうできると思うんですよ。
技が飛び出すごとにどっと拍手が沸いたり、ノリノリのところで手拍子が起こったり。
実際、周りで手拍子したそうなお客さんがいっぱいいたし、
お客さんを煽るようなダンサーの振りもちょっとあったし。

でも、お客さんが乗るために不可欠な「同じ動作の継続」と「動作と動作の間」がなかったんですよね。
たとえば、バレエでギュンギュン回るソロがあったとして、それはある程度の時間続けて回って、
シュタっとフィニッシュして、「どうだ!」ってなるから、お客さんはおお~って拍手するわけですよね。
で、これに対して、今回の「ラプソディ・イン・ブルー」では、
それこそ「おお~」と思うようなすごい技がてんこ盛りなんですけど、
たくさんのダンサーが入れ代り立ち代りで技を繰り出すもんだから、
お客さんはおちおち拍手をしている暇もない、という状態(笑)。
なんせ主要ダンサーだけで6人いて、バックダンサーまで絡みますから。

というわけで、こういう構成にしたからには、
きっとそういう「お客さんノリノリ」的な公演にはしないつもりだったんだろうなー、と思ったのでした。
ここまでベタベタの選曲なんだし、
いっそそこまでやっちゃっても構わなかったんじゃないのかなーとも思ったんですけど(笑)。

でも、全体にとても面白い公演でした。
来年も何かまた企画があったら見に行きたいです。