読書バトン。

ぴぱさんからいただきました~、読書バトン。
ここぞとばかり語り倒し、あまりに長くなったので、2回に分けて掲載です(苦笑)。

1.今読んでる本は?
 なぜかたまたま、笠松宏至『徳政令』。何度読んでも面白い。
 一般読者にも専門家にも好奇心を刺激する、新書の鑑のような本。
(数日がかりで書いてるんで、実際には「そのとき読んでた本」ですが。)


 ホームズとルパンの対比はこないだ書いたので省略しますが、
 ホームズは「馬車&汽車」、ルパンは「自動車&エレベーター」なイメージ。
 ほぼ同時代なのに、19世紀と20世紀の差をくっきり感じるんですよねー。

 で、金田一は「田舎に裸電球」(笑)。
 そして、死ぬべき人間が全て死んでから謎解きをする金田一…遅いよ金田一
 でもそんな金田一が好き。あんまし読ませてもらえなかったけど。
(まあ、小学生の情操教育的にはいかがなものかという気はする 笑)

 明智小五郎にライバルの探偵が登場すると、必ずそいつが犯人。
 主要登場人物で「ケガはするけど命は助かる」やつは必ず犯人。
 怪人二十面相が使う「インドのロープの魔術の応用」がいまだにわからない。
(※空き地でロープが宙に向かって伸びて、そのロープをするすると登っていくというマジック)
 大人になって天知茂『江戸川乱歩の美女シリーズ』を見るとツッコミどころ満載で爆笑してしまう。
 でもそんな明智小五郎が好きだった(←過去形)。

…というなかで、小学生だった私の心に一番キャッチーだったのは、
 ジュール・ヴェルヌ十五少年漂流記』だったのでありました。
 多分、「子供たちだけで漂流する」っていうシチュエーションがツボだったんでしょうね。
 今でも大好きな作品です。
 ちなみに、この本でニュージーランド最大の都市はオークランドと覚えました。

 てゆーか、こう書いてきたらC・S・ルイス(『ナルニア国物語』)と
 アーシュラ・K・ル=グウィン(『ゲド戦記』)も当然入れなくちゃ。
 
3.中学生の時はまった作家は?
 西村京太郎と山田風太郎と檜山良昭。
 …偏った中学生だな~(笑)。

 西村京太郎は、作品自体は父親の影響で小学生の時から読んでたんですけど、
 中学校の横に新しく公立図書館が出来て、全集で初期作品が読めるようになったんですよね。
 いや、近年の「駄作多作作家」としての西村京太郎しか知らない人のために言っておくと、
 昔の西村作品はほんとすごいんですって。
 古典的な双子トリックに一ひねり加えた『殺しの双曲線』。
 空間・人間を豪快に限定した中で、ストーリーが緻密に展開する『七人の証人』。
 『華麗なる誘拐』をはじめとする、意表を突く誘拐もの。
 なかでも個人的一押しは、『名探偵なんか怖くない』などの『名探偵~』シリーズ。
 パロディもので、ポワロ、メグレ、クィーン、明智という4人の名探偵が一同に会します。
 未読の方にはぜひオススメしたい逸品ぞろいです。
…そして、近年の劣化振りを見るにつけ、つくづくと「才能は枯渇する」のだなあ、
 との思いを強くするのですが(苦笑)。

 山田風太郎は、以前も書きましたが、1991年に毎日新聞で連載された
 『柳生十兵衛死す』との出会いが、あまりに衝撃的で。
 江戸時代と室町時代を、能をタイムマシンとして使ってつなぐというその発想!これぞ鬼才!
 登場人物も、江戸時代では後水尾上皇・明正上皇由比正雪徳川頼宣服部半蔵など、
 室町時代では足利義満後小松天皇・一休・世阿弥・義円(足利義教)・後南朝愛洲移香斎など、
 時代小説好きにはたまらない面子。
 柳生十兵衛三部作(『柳生忍法帳』・『魔界転生』・『柳生十兵衛死す』)は、
 「四の五の言わずとにかく読んでみ」と、私は言いたい。
 とはいうものの、その他の作品が勧められるかと言われると困ってしまいますが…。
 や、正直に言えば、あのエロさとグロさも好きなんですけどね。

 檜山良昭は、知ってる人は知ってる「架空戦史もの」の先駆者にして大家。
 最近はこの手の本はもう読むこともないですけど(「はしか」みたいなもんです 笑)
 まあ、研究対象としての軍事史にはいまでも興味はあります。
 というか、政治史やってる限り、軍事は避けて通れない要素だからな~。
 ついでにいうと、檜山さんの作品のいいところは「こうやれば勝てた」ではなく
 「どだいダメだった」ところに主眼があり、なおかつ、
 むしろ「戦争の悲惨さ」に力点を置いていることにあります。
 この人の本を読んで「軍国少年」になる人はいない気がします(笑)。

4.高校生の時はまった作家は?
 筒井康隆小松左京芥川龍之介中島敦島田荘司・伴野朗。
 
 筒井作品は、スラップスティック系も大好きなんですが、
 一番好きなのは、ある意味筒井作品らしくない七瀬三部作。
(『家族八景』・『七瀬ふたたび』・『エディプスの恋人』)
 テレパスというのはSFの古典的素材ですが
「人間の複線的思考を、文字によって同時的に表現する」という難事をやってのけた点で、
 SFの枠を越えた傑作だと思います。
 もちろん、ストーリーもキャラも設定もどれも素晴らしい。
 短編でも、「ホンキイ・トンク」や「夢の裁判官」といった
 優しさ溢れる(これもある意味筒井作品らしくない 笑)佳作が好き。

 小松作品はSFとしても好きですけど、小松作品はどちらかというと
 SF的状況設定よりは、そこに生きる現実の人間のカッコよさが魅力だと思います。
 その意味で、一番好きな作品は『首都消失』。
「東京が突然正体不明の雲に包まれ、通信も交通も途絶」という状況で、
 社会や生活を再建するために懸命に努力する残された人々の姿が、実にカッコいいです。
 『復活の日』の吉住さんも好きだなあ。
 理想像とか憧れという点で、人として大きな影響を受けた作家です。

 芥川龍之介中島敦は、もう別格の存在。
 内容もさることながら、まず文章の格調の高さにノックアウトですよ。
 あれは「漢籍の知識が素養としてあったから」こそでしょう。特に中島敦は。
 芥川作品では、やっぱり説話を題材にした作品が好きですね。
 当然そこにモダンな感覚での一ひねりが加わるわけですが、そのひねり方が素晴らしい。
 「邪宗門」は完結させてほしかったな~。

 中島作品では、「弟子」と「李陵」が自分の中では双璧。
 「弟子」は、子路の視点から描くことで、孔子をこんなにも生き生きと描けるのか!と感嘆した作品。
 「李陵」は、自分ではどうにも出来ない悲運の中での、
 主人公李陵の悲しみ・怒り・あきらめといった諸々の激情に、いつも心を揺さぶられます。
 作品の評価としては「弟子」、どちらが好きかと言われれば「李陵」、という感じ。
 あと、「文字禍」は文系研究者必読の作品です。
 「文字がいかに恐ろしく、人を悲劇に陥れるものであるか」を飄々と説いてます(笑)。

 伴野朗は、ちょっと説明がいる作家かも。
 このページが一番詳しいのかな~。
 東京外大(中国語)→朝日新聞特派員という経歴の持ち主で、
 北京原人の化石消失を扱った『五十万年の死角』で、1976年作家デビュー・江戸川乱歩賞受賞。
 作家デビュー後も10年以上特派員生活を続け、上海支局長などを勤めた異色の経歴の持ち主です。
 基本的にはミステリー仕立ての冒険小説が多く、
 作品群はその素材から、
  ①中国の歴史もの
  ②日中戦争期のスパイもの
  ③近現代中国及びその周辺のスパイもの
 に大別できます。
 特に中国の歴史を素材にしたものは、定番の『史記』・『三国志』ものから、
(ただし、後漢の班超を主人公にした『大遠征』など、定番にとどまらない。
 ついでに言うと、『史記』に関しては宮城谷昌光の先駆的存在。)
  唐代の『長安殺人賦』・『玄宗皇帝』、『西域伝』、
  明代の『元寇』・『朱龍賦』・『永楽帝』・『大航海』(主人公は鄭和)、
  清代の『南海の風雲児 鄭成功』・『乾隆帝暗殺』、
  辛亥革命期の『砂の密約』
 と、実に多様な時代・対象にわたっています。

 僕が高校生の頃は、まだ田中芳樹は中国ものをほとんど書いてなかったんですよね。
 (『風よ、万里を翔けよ』が1991年。僕が中2の年です。)
 で、『三国志』を横山光輝のマンガ→吉川英治柴田錬三郎陳舜臣…と
 読み進んだ次に出会ったのが、伴野朗の作品群でした。
 個人的には、陳舜臣御大と、宮城谷昌光田中芳樹という1990年代以降の作家の
 ちょうど中間に位置する人だと思ってます。
 中国物のファンの方には、ぜひオススメしたい作家です。

 島田荘司は、言わずと知れた新本格派の旗手にして大家。
 特に吉敷竹司シリーズが好きでした。
 それと、『火刑都市』とか『網走発遥かなり』とか、近現代都市の評論的な作品も好きでした。
 高校~大学1・2年の頃に相当はまって読みましたが、
 読んだ作品はだいたい90年代前半までのもので止まってますね。
 多分その理由は、御手洗潔シリーズがちょっと苦手で、
(『占星術殺人事件』・『斜め屋敷の犯罪』は名作だとは思うけれど)
 近年は吉敷竹司シリーズの新作が出ないから、だと思います。
 あと、この人に関しては、作詞の才能がトンとないのはご愛敬(笑)。
(どのくらいダメか知りたい人は、『消える「水晶特急」』を読みましょう)

続きはまた明日。