「ウルビーノのヴィーナス」@国立西洋美術館。

さて、昨日(もう一昨日か)は東京に行ってきました。
久々に「夜行バス往復」だったんですが、やっぱキツイな。
しばらくやらないうちに、体がなまったか?(苦笑)
来週も、ほぼおんなじことをやるんですよねー(罰ゲーム?)。
しかも、来週は学会なので、頭脳労働→宴会というパターンなんですが。
うーむ。まあ「いい予行演習になった」ということにしておきましょうか。

で、東京駅近くで一風呂浴びてさっぱりしてから、まずは上野の国立西洋美術館へ。
お目当ての展示は、「ウルビーノのヴィーナス 古代からルネサンス、美の女神の系譜」です。

公式HPを見ても、「ウルビーノのヴィーナス」以外の展示品が載っていない、という
ちょっと「おいおい」な企画ではあったんですが、まあそこはそれとして。
なにせ、日本でルネサンス期の絵画を観られる機会って、あんましないですからねー。
おまけに、関西には巡回して来ないし…となると、
せっかく東京に行くついでがあるからには、見逃すわけには行きますまい。

で、展示は5部構成でした。
Ⅰ ヴィーナス像の誕生―古代ギリシアとローマ
Ⅱ ヴィーナス像の復興―15世紀イタリア
Ⅲ 《ウルビーノのヴィーナス》と”横たわる裸婦”の図像
Ⅳ ”ヴィーナスとアドニス”と”パリスの審判”
Ⅴ ヴィーナス像の展開―マニエリスムから初期バロックまで

全体を通しては、ヴィーナス像の描かれ方の変遷を時系列でたどる構成。
Ⅲでは、その流れの中で《ウルビーノのヴィーナス》が持つ画期性にスポットを当てています。
自分の専門が歴史だから、というのもあるんでしょうけど、
テーマ性が非常に明快で、実に面白かったです!
けっこう美術館の展示って苦手なんですけど、ものすごく楽しめました。

Ⅰは古代ギリシア・ローマの作品なので、彫像と焼物中心。
「あらやだ」ポーズを取る「メディチ家アフロディテ」のチラリズムはもちろん激しくツボですが(笑)、
「やっぱカメオっていいよねー」としみじみ。
あの小ささと精巧さは、日本の工芸と通底するものを感じます。

Ⅱはルネサンス初期の絵画が中心ですが…
作品としては、良くも悪くも中世の影響がまだまだ色濃いですよね。
いろいろな象徴や寓意がてんこ盛りで、それなりに面白かったですけど。
むしろ古代ローマファン的にツボだったのは、
プリニウス『博物誌』とキケロの『書簡集』のルネサンス期の写本だったのでした。

で、Ⅲがいよいよ本展示のメイン。
ティツィアーノウルビーノのヴィーナス」の最前列で立ち止まり、ジーッとガン見。
これだけの傑作を、これだけ落ち着いてじっくり見られる機会があるなんて、
なんだかちょっと信じられない感じでした。眼福。
このフロアでは、
ポントルモ作・ミケランジェロの下絵にもとづく「ヴィーナスとキューピッド」も展示されていました。
さすがミケランジェロ先生、ヴィーナスを「男の筋肉」で描くって…すごい発想。
ウルビーノのヴィーナス」の方が製作時期は後なので、両作品の影響関係や、
それぞれがその後の作品に与えた影響など、具体的に良くわかって面白かったです。

あと、同じようなモチーフの作品と比較してみると、「ウルビーノのヴィーナス」のすごさが際立ちますね。
ヴィーナスの描き方そのものもそうですし、構図とかも。
画面左側から右下にかけていっぱいに描かれる、熱い視線を送ってくるヴィーナスと、
画面右上の、奥の部屋で何事かガサゴソやっている女性二人。
これによって、絵画としての立体感というか奥行きも生まれていますし、
「この背景はいったいなんだ?」という興味もかき立てられます。


続いてⅣは、「ヴィーナスといえばこれでしょ」という定番のモチーフを描いた作品を、
いろいろなジャンルの作品から紹介。
「ヴィーナスとアドニス」は、絶世の美少年アドニスの死にまつわる場面を描いた作品。
やっぱ「美男美女カップル」というのは、悲劇的エンディングのフラグなんでしょうかねえ。
「パリスの審判」は、「もっとも美しい女性が手にする黄金の林檎」を
ユノ・ミネルヴァ・ヴィーナスの三女神が争い、審判役となったトロヤの王子パリスを
「絶世の美女ヘレネとの結婚」というエサで釣ったヴィーナスが、見事黄金のリンゴをゲット。
(…って、それはもはや美しい女性の証しでもなんでもないな 笑)
で、怒ったユノとミネルヴァが「トロヤを滅ぼしちゃるけんのお!」と怒りまくって
トロヤ戦争勃発へ…というおなじみのエピソード。
個人的にはやっぱり、「パリスの審判」が好みかなー。

で、最後にⅤで、マニエリスムから初期バロックまで、その後の展開を追う、と。


このレポ書いてて知ったんですが、「ウルビーノのヴィーナス」って
イタリア政府から国外持ち出し禁止指定がかかったんですね。(参照
というわけで、今回が最初で最後の海外展示なんだそうです。
そっかー。見に行ってよかった~。

[おまけ]
おみやげに買ったクリアファイル。
https://blogs.yahoo.co.jp/IMG/ybi/1/a5/64/historian126/folder/1497054/img_1497054_53377426_0?2008-05-12 01:31:19
画像が大きすぎるとかえって使えないし、どうしようか…と思ってたんですが、
(いかに芸術作品とはいえ、あのデザインを人前で持ち歩くのは…ねえ 笑)
ほどほどのサイズだったので即買い。