「怪異学と私」アンケート。

さて、恠異学会の大会の模様はコチラの通りだったわけですが、
今度の30日は、大会の成果についての検討会を行うことになりました。
で、大会の際に問題になったのは、
「『王権と恠異』なんていうテーマが立ってるけど、そもそもなんで王権なんていうテーマ設定やねん」
「歴史の連中は自分たちの視角だけで恠異を分析すれば事足りると思っとんのか」
という根本からの疑義を呈した意見だったわけで(ま、極端な表現にしてますけどね)。

でまあ、これはこの際「怪異学」とは何ぞや、ということも含めて、
きちんと討論しといた方がいいだろうということで、この点を議論することになったのですが、
その際、時間切れ~という事態を防ぐために、事前アンケートをとることになりました。
そんなことをやる学会なんて聞いたことないですけどね。
でも、そもそもが既成の枠組みにとらわれない学会としてスタートさせたわけですし。
それに、問題関心の共通していて、かつ比較的小回りのきく規模の学会だからこそ、
可能であり、また有効な手段だと思いましたので(←私は企画サイドの人間)。

で、アンケートと私の解答はこんなのでした。
【アンケート】
1あなたにとって、「怪異学」の対象となる怪異は、どのようなものと定義されますか
代表による「怪異」の3類型に特に付け加えることはありません。
※「怪異」の3類型
 1中世社会においてすでに概念化されていた怪異(要するに、史料上「怪異」と表現されるもの)
 2「怪異」と認定されることはないが、中世人が「怪しい」と考える事象
 (つまり、史料上「怪異」と表現されないが、中世人も怪しいと思っていること)
 3中世社会で起こり、現代人が「怪しい」と考える事象
 (中世人はそれを別に怪しいと思っていない)

2あなたが研究対象としている怪異と「王権」は関係すると思われますか
 関係すると思われる場合、「王権」はどのような意味・位置付けを持ちますか。
「怪異と「王権」がどう関係するか」というよりは、
「自分の研究上の興味関心は政治史上の問題と関係している怪異にある」と言うのが正直なところ。
一般論として、怪異全体が王権の問題に収斂するのかどうかについては、
個人的見解は今のところ持ち合わせていません。

3学際的な怪異研究のためにどのような方法論が可能であるとお考えですか
(それが可能か否かについても含めて)
歴史学・国文学・民俗学等の全てのジャンルから、それぞれの怪異研究の分析視角や分析対象、
問題関心などを提示することで、それらを共有すること、あるいは問題点を補完し合うことが
可能となるのではないか。
今回の大会は歴史学の視点から見た恠異像の提示という意図であったと思われるが、
同様の提示を他の領域からも出し合えば良いと思っている。
そして、そうして提示されたものが他の研究視角とどのようにかみ合うのか、
どのような意義を持つのか、どのような問題点が見えるのか、どのように受け止められるのかを、
受け手の側で咀嚼して投げ返していく必要があるだろう。
これまで個別の報告を通じて蓄積されてきたものの中から見えてきたものを、
以上のような基礎作業を経て総合し、怪異学が射程とする対象を再設定する時期なのではないかと思う。
(以上)

えーっと、正直に答えた結果がこれな訳ですが、
本来のアンケートの趣旨は「あなたにとっての怪異・怪異学とは」だったはずが、
出てきた答えは「怪異学と私」という内容ですね、どっちかっちゅーと。
で、あからさまに「私にとって怪異学は政治史をやるための道具の一つです。
それ以上のことについてはあまり興味ないです」と言っているに等しい(苦笑)。
(念のために補足しておくと、怪異学なんかどうでもいいと言っている訳じゃないです。
 怪異学は「私にとっての」メインテーマじゃないです、と言っている。…似たようなもんか。)

あの人たちは、こんな人間を委員にしちゃったってことをわかってんのかな~?
いやまあ、これをきっかけに不信任されればそれこそ「物怪の幸い」ですが(笑)。
まあ、こんなスタンスでも実務は担えるし、役に立つことはあるので。
実際問題として、今回のアンケートの文案は説明書きも含めて私が作りましたからねえ。