ロシア国立ボリショイ・バレエ団『ラ・バヤデール』

ロシア国立ボリショイ・バレエ団『ラ・バヤデール』
5月13日(土)18:30~ 兵庫県立芸術文化センター
作曲:L・ミンクス/振付:Y・グリゴローヴィッチ、M・プティパ

ニキヤ -バヤデール:ナデジダ・グラチョーワ
ドゥグマンタ -ラジャ:アレクセイ・ロパレヴィチ
ガムザッティ -ラジャの娘:エカテリーナ・シプリナ
ソロル -名高い戦士:ウラジーミル・ネポロージニー
大僧正:アンドレイ・スィトニコフ
トロラグワ-戦士:ヴィタリー・ミハイロフ
奴隷:キリール・ニキーチン
マグダヴェーヤ-苦行僧:ヤン・ゴドフスキー
アイヤ-奴隷:エウゲニア・ヴォロチコワ

ジャンペ:ジュ・ユン・ペ、スヴェトラーナ・グニェドワ、
パ・ダクシオン(第2幕):アリョーシャ・ボイコ、スヴェトラーナ・グニェドワ、
             スヴェトラーナ・パヴロワ、アナスタシア・クルコワ、
             ユリア・グレベンシュチコワ、オリガ・ステブレツォワ、
             ヴィクトリア・オシポワ、アンナ・ニクーリナ
             パーヴェル・ドミトリチェンコ、エゴール・クロムシン
太鼓の踊り:アナスタシア・ヤツェンコ、ゲオルギー・ゲラスキン、デニス・メドヴェージェフ
黄金の仏像の踊り:アンドレイ・ボロティン
マヌー(壷の踊り):ダリア・グレーヴィチ

影の王国(第3幕)
第1ヴァリエーション:エレーナ・アンドリエンコ
第2ヴァリエーション:ナターリヤ・オシポワ
第3ヴァリエーション:ネリ・コバヒゼ

指揮:パーヴェル・クリニチェフ
演奏:関西フィルハーモニー管弦楽団

GWにほとんど家に籠もっていて嫌気が差しつつあったところに、
ヤフオクでチケットが出ていることを教えてもらい、即決で落札してしまいました。
いやー、いった甲斐がありましたよ。すみからすみまで楽しめました。

まず、ニキヤのグラチョーワとソロルのネポロージニーのお二人がすごく良かったです。
特にやっぱりグラチョーワ。
友人から彼女のニキヤはいい!と聞いていたのですが、確かに素晴らしかった。

拝火の儀式で聖性を漂わせる。
言い寄ってくる大僧正にこっぴどく肘鉄(笑)。
ソロルとの逢引でラブラブ。
ガムザッティと女の対決!
ソロルとガムザッティの婚礼で、踊らなくてはならない悲しみ。
蛇にかまれ、大僧正の解毒剤を拒む。

それぞれの場面の演じ分け、特にラブラブモードと、婚礼の踊りの場面の対比がすごく良かったです。
それと、拝火のシーンの腕のしなりとか、婚礼の踊りでの上半身の反りのしなやかさとか、
とにかく曲線がめっちゃキレイで、すごいなーと思って見てました。

ネポロージニーもすごく良かったです。
特に三幕のソロとパ・ド・ドゥはばりばりキメてました。
全力出し切ったのか、カーテンコールではちょっと放心気味?で、
グラチョーワが「前に行くわよ」って促してるのにしばらく気付かず立ちっぱに。
二人は幕が下りてからも拍手に応えて登場し、何度も挨拶していました。
観客もスタオベ。そりゃーあの舞台ならそうでしょう。

で、主役二人以外も素晴らしかった!
まず印象に残ったのはガムザッティのシプリナ。
もう登場した瞬間からタカビーで憎らしいお嬢さま(笑)。
ニキヤと火花を散らす場面もさることながら、
ニキヤが毒蛇にかまれたあとの「何か文句がおあり?」と言わんばかりの態度が素晴らしい(笑)。

大僧正は非常に小ズルい感じでよかったです(笑)。
なんか、手塚治虫の漫画にこういうキャラいるよね、という感じ。

しょっぱなのシーンが苦行僧の踊りなのですが、これが腰蓑一丁の男性たちの群舞で、
苦行僧というよりは、なんだか南の島に取り残された漂流民のよう(苦笑)。
でも、これがまたかっこいいんですわ。筋肉マニアとしてはたまらん(笑)。
特にマグダヴェーヤのゴドフスキーがすごく良かったです。
(しかし、これは言わないお約束とわかっているとはいえ、
 ロシアのお方々のインド理解はどうなってるんだ? 苦笑)

で、2幕の、例によって「各種取り揃えております」状態のキャラクターダンス。
扇子の踊り・鸚鵡の踊り・黄金の神像の踊り・壷の踊り(おチビちゃん二人がかわいらしい)と、
どれも良かったです。
(黄金神像は、去年見たベルリン国立バレエ団マラーホフ版だと神様の顕現?なわけですが、
 今回のこれだと、ほんとにただの婚礼の余興ってことなんすかね?)
しかーし、個人的に最もツボだったのは太鼓の踊り。
ガタイのいい兄ちゃんたちがリズミカルに力強く、上半身裸で踊りまくります。
特にゲラスキン。ひときわ立派な体格と、迫力のあるルックスが最高!
今回見た男性ダンサーの中で、実は一番気に入ったかも。

でもって、3幕の影の王国。
コールドの揃いっぷりがまた素晴らしかった!
「コールドっちゅうもんはこうやって見せるんよ!」といったところ。
なんちゅうかね、合唱のユニゾンなんかでもそうですけど、
何かが強烈に揃ってるっていうのは、それだけでものすごい説得力が出るんですよね。
演じてる途中から、もう客席のあちこちから感嘆が。それぐらい素晴らしかったです。

音楽は今回も(こないだの東バの公演もそうだったから)関フィルのみなさんでした。
こないだも良かったけど、今回もすごく頑張ってました。グッジョブ!
これはほんと、そのうちに関フィル単独の演奏会を一度聞きに行かねば。
正指揮者の藤岡幸夫さんは、私が去年までいた合唱団の、今度の夏の演奏会の指揮をして下さるので、
近いうちに聞けるのですが。

それにしても、同じバヤデールでも、去年見たマラーホフ版と、今回のグリゴローヴィッチ版では
ストーリーがどえらく違うんですね~。
去年のだと最後が婚礼の場面で(2幕は婚約)、その場にいた人はみんなもろとも死んでしまいますが、
今回のは死ぬのはソロル1人。
ソロルは聖火への宣誓に背いた罰として死ぬわけなので、それで筋は通ってますか。

ところで、一つ良くわからないことが一つ。
2幕でニキヤは花の主がソロルだと思うわけですが、
自分を振った相手の結婚式で、振った当人から花をもらう気分て、どうなんでしょう??
なんかどうにも複雑そうな気がする。
実際、グラチョーワを見ていても「なんとも言えない」風情に見えたのですが。
パンフレットには「ニキヤの踊りは溢れんばかりの幸せと歓喜に満ちている」とありますけど、
そういうもんなんですかね~。

うーん、それにしても、やはりいい公演を1人で見るというのはもったいない気分。
やっぱ見終わったあとは、人と感想を共有したいわけで。
バレエに限ったことじゃありませんけどね。