「シルヴィ・ギエム 進化する伝説」。

シルヴィ・ギエム 進化する伝説」@東京文化会館 12月10日

カルメン
振付:アルベルト・アロンソ 音楽:ジョルジュ・ビゼー/ロディオン・シチェドリン
カルメン:斎藤友佳理
ホセ:大嶋正樹
エスカミリオ:高岸直樹
ツニガ:後藤晴雄
運命(牛):奈良春夏
女性ソリスト:小出領子・高村順子
東京バレエ団

「椿姫」 第3幕よりパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン
シルヴィ・ギエム ニコラ・ルリッシュ
ピアノ:高岸浩子

「シンフォニー・イン・D」
振付:イリ・キリアン 音楽:ヨーゼフ・ハイドン

井脇幸江・長谷川智佳子・西村真由美・乾友子・佐伯知香・高木綾・田中結子・阪井麻美
中島周・高橋竜太・古川和則・平野玲・松下裕次・野辺誠治・小笠原亮・宮本祐宜

「Two」
振付:ラッセル・マリファント 音楽:アンディ・カウトン
シルヴィ・ギエム

「Push」
振付:ラッセル・マリファント 音楽:アンディ・カウトン
シルヴィ・ギエム ラッセル・マリファント

カルメン
初めて見たんですが、面白い演目でした。
キャストも良かったんだと思いますけど。
大人の雰囲気ばりばりの斎藤カルメン。カッコいい!
過剰なまでにキザな高岸ホセ。ヒロミ・ゴー入ってます(笑)。
カルメンに「猫まっしぐら」状態の大嶋エスカミリオ。ラブラブ光線放射中。
この三人が織りなす三角関係…。

がだ。
ここに体育会系的にめちゃめちゃカッコいい後藤ツニガがからむわけです。
後藤隊長~!」って感じっす。なんかこう、70年代青春スポコンドラマの主将とか、そんな雰囲気。
んで、冒頭、カルメンのソロに続く踊りは、ツニガとエスカミリオの同じ振りの踊り。
ここで「ツニガ―エスカミリオの支配―被支配関係なんだなー」と思った私、そのままこんな妄想が…

 後藤ツニガと大嶋エスカミリオは、精神的にできてるに違いない。

きっと後藤隊長は70年代青春スポコンドラマ的に「オレは女なんか好きにならん!」とか言ってる訳です。
で、大嶋エスカミリオは「そうですよね、隊長!」という感じ。
が、斎藤カルメンにモーションをかけられたエスカミリオはメーロメロに。
でもって、実は内心「カルメンいいかも」と思ってるのに、突っ張って素直に行動に出せない隊長、
「あんな女のどこがいいんじゃ~、女なんかやめておけ~」と言う。

…という図。
見てる間じゅうそんな妄想がむくむく涌いてきて、「いや、おかしいやろ」と一人ツッコミ。
これはきっとそれくらい後藤隊長がカッコよすぎたんだな、きっと。うんうん。

あと印象に残ったのは女性ソロの小出さんかな~。
左右色分けのナゾ衣装がやたらと良く似合ってました。
何を着せても似合う不思議な人だ…。
あと、舞台中央の幕の牛の絵の鼻の穴が「♀♂」になってて芸が細かい。
セットもシンプルなのに良く出来てたし、
前でソロをやってるときでも後ろでコチャコチャ振りがあったりして、いろいろ面白かったです。

大嶋さんは絶好調!と思ってたら、翌日こんなアクシデントがあったんですね。
好事魔多しとは言うけれど…お早い回復をお祈りします。
それにしても、東バ&NBSは今年はほんと大変な一年ですね、これ…。


で、休憩を挟んで2部が「椿姫」・「シンフォニー・イン・D」・「Two」ですが…。
なんちゅうか、「昼ドラ」・「学園もの」・「太極拳」の豪華三本立て。
それぞれに面白いんだけど、各演目間がものすごい偏差でした。

○椿姫
「死病を患うギエム」&「ラブシーンのギエム」。
どんなになるのかと思ってたんですが、
(考えてみると、今までストーリーがあるものを踊ってるギエムというものを見たことがなかった)
なるほどこうなるのか、という感じでした。
ドレスをするりと抜いた瞬間、「少女」と化すところがさすが。
今回は3幕だけでしたけど、全幕で見てみたいなあ。
何年か前にフェスティバルホールで全幕公演があったはずですが、確か都合で行けなかったんですよねー。
いつかまた機会があるといいんだけど。

○シンフォニー・イン・D
2年前にも大阪公演で見た演目ですが、大阪より東京のお客さんの方が反応がいい気が(笑)。
見ててとにかくおかしくて楽しい演目です。
振付にプラスして表情が肝心な演目ですが、高橋さんの顔芸にすっかりヤラレました。
他のみなさまがたも、「おバカ男子&おしゃま女子」な雰囲気がほんと笑えます。
女性ではなんと言っても反則的に衣装が似合ってる西村さんがスゴい。
(衣装の写真はコチラの一番下をご覧下さい。)
ペトルーシュカ」のときの踊り子(緑の帽子にトライアングル)といい、つくづくスゴい。
個人的には井脇さんのちょっと倒錯的な風情も実に魅力的なのですが(そういう趣味はない…はず)。

○「Two」・「Push」
ギエムがソロで踊る「Two」と、マリファントと踊る「Push」。
見終わった瞬間に「ギエムすげー!!!!」ってなるのは「Two」の方だと思います。
実際、終わった瞬間の観客の反応は熱狂的ですらありましたからね。
それこそ、まるでこの演目がこの日のラストであるかのように。
「人間の体ってここまで動けるもんなんか」と思います。

がだ。
それを見て「ギエムすげー!!!!」ってなったあとに、
あらためて「Push」を見ると、これがすごく面白い。
基本、「押す」・「持ち上げる」・「回る」の組み合わせを、
ギエムとマリファントが二人でゆったりと繰り返す…という、それだけと言えばそれだけなのですが。
なんというか、際限なくループするんですよね。音楽も動作も。
盛り上がって、ここで持って行くのかな…と思いきや、ふっと引いて、
既視感のある動き(と音楽)へと戻っていく。
その繰り返しが、黒みの背景とあいまって、なんともいえない陶酔感につながっていきます。
時間間隔が麻痺していくような、そんな感じ。
際限ない円環構造といい、これって見てる側にとってはある意味「裏ボレロ」なのかも。
面白かったです。

それにしても、一番いいプログラム構成(かつ、個人的にツボなキャスト)で見られて良かったです。
ビバビバ♪