芥川の恋文。

忙しさにかまけて、うっかり全日本の男子SPを見逃してしまったヒナです。
…「見ててもどうせ6人分の演技しか見られなかったのか」という気はしますけどね(苦笑)。
去年までの放送はずいぶん良かったと思うんですけどね。
どうしちゃったんでしょうかフジテレビ。
とりあえず、見逃した分はCSで見ることにします。
 
さてそれで、クリスマスイブらしく恋愛成分多目のネタを。
あらかじめ言っておきますが、自分の話ではないです。
先月たまたまNHKのBSを見ていたら、ラブレターの特集番組みたいなのを放送していて、
その中で取り上げられていた芥川龍之介のラブレターの内容が、非常に面白かったんです。
で、どっかで全文読めないかなあと思っていたら、ちゃんとネット上にありました
 
この恋文は塚本文という女性に宛てたもので、のちにこの女性は芥川と結婚し、
比呂志・多加志・也寸志の三人の男児の母となります。
で、このラブレターが書かれた時点では芥川は求婚中で、
芥川は千葉県一宮町の「一宮荘」滞在中にこれを書きました。
 
番組で紹介されていて、すごいな!と思ったのはここです。
夕方や夜は 東京がこひしくなります。
 さうして 早く又 あのあかりの多い にぎやかな通りを歩きたいと思ひます。
しかし、東京がこひしくなると云ふのは、
東京の町がこひしくなるばかりではありません。
東京にゐる人もこひしくなるのです。

さう云う時に 僕は時々 文ちゃんの事を思ひ出します
この飛躍が、文学だよなあというか、さすがは芥川というか。
 
番組では紹介されていませんでしたが、後半がまたよろしい。
僕のやってゐる商売は 今の日本で 一番金にならない商売です。
その上 僕自身も 碌に金はありません。

ですから 生活の程度から云へば 何時までたっても知れたものです。
それから 僕は からだも あたまもあまり上等に出来上がってゐません。
あたまの方は それでも まだ少しは自信があります。
うちには 父、母、叔母と、としよりが三人ゐます。それでよければ来て下さい。
これはまた赤裸々な(笑)。
これを書ける芥川もえらいと思うし、こう書かれてOKできる相手もすごいし、
そういう相手をきちんと選んでいる芥川も見る目があるよなあと思います。そら惚れるわ。
 
そして後段、「あたまの方は それでも まだ少しは自信があります。」とか言っちゃう芥川はカワイイと思う。
こういう、ささやかな自意識というか、照れ交じりのプライドみたいなのは好きですね。
手紙の最後の、
僕がここにゐる間に 書く暇と書く気とがあったら もう一度手紙を書いて下さい。
「暇と気とがあったら」です。書かなくってもかまひません。
が 書いて頂ければ 尚 うれしいだらうと思ひます。
も、これまたカワイイ。
 
全体に、「これが大正五年に書かれたラブレターか!」と思わずにはいられない、
素敵な文面でした。大正五年(1916年)て、もう100年近く昔ですよ。
貰ひたい理由は たった一つあるきりです。
さうして その理由は僕は 文ちゃんが好きだと云ふ事です。
 勿論昔から 好きでした。今でも 好きです。その外に何も理由はありません。
とか書いちゃうんですよ。
「日本の男性は『愛してる』とか言わない」とか言われると、僕なんかは「ほんまかいな」と思っちゃう口ですが、
まあ要するにそんなもん個人差だし、TPO、特にOさえ間違えなければ、そんなもん「言った者勝ち」でしょう。
 
というわけで、特に芥川ファンにとっては、読めば読むほど芥川が好きになる、素敵なラブレターでした。
芥川ファンもそうでない人も、ぜひ一度全文読んでみて下さい。
上にも張りましたが、リンク先はコチラです。